キールに沈んで (ページ19)

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向かい側に座っていたのにいつの間にか
ちゃっかり隣に座る北山さん

『ち、近くないですか…？』

「そう？」

ふふふって言いながら私の肩に触れる

「緊張してるでしょ」

『な、あ、いや、その…』

「キョドりすぎ」

んふふって鼻にかかったような声が心地良い

近付いてくる唇受け入れると
驚いたようにくりくりの目をさらに大きくする

『何ですか』

「ううん、何でもない」

そう言ってまた触れる唇
さっきより長くもスをすると
なんだか照れくさくて

「あー」と言いながら私を抱き締める彼の背中に私も腕を回した

しばらく抱き合っていると
北山さんがゆっくりと話し始める

「さっき藤ヶ谷と会って動揺してたでしょ」

『え？』

「実は見てた」

『覗き見ですか』

「ちげーわ」

『ふふ』

「ちょっとだけ、やだなーって思った」

『ちょっとだけですか？』

「あ？」

『本当にちょっとだけ？』

彼の胸から少し離れて顔を見つかると「うぜー」って言われた

「ムかつく」とも言われた

そんな北山さんがなんだな愛おしく思えて
今度は私から抱き付いた

「うわー、離れたくねー」って言いながらぎゅーって強く抱き締めてくれるから、
私も負けじと彼に抱き着いた

「この後は仕事？」

『ううん、今日はもう終わり』
「俺も」

『そっか』

「うん」

「メシでも行かね？」

『メシ？』

「うん」

『…行く』

「あ、ちょっと期待してたんだろー。Aのえっちー」

『は!?』

なんてくだらない会話してたのに

「荷物持って来て、俺も取り行くから」

優しい笑顔で言われたら頷くしかないじゃない