英くんが今日も愛しい【国見英】

56.愚図る ページ22

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あれから2年経ち、私は社会人になった。

現在午前8時。





「………やだ」

『…そう言われましても…』





ええ、かれこれ10分こんな状態です。

玄関でヒールを履いていると、
いつもはまだ寝ている英くんが起きてきて

覆いかぶさるように抱きしめられている。


出勤は車を使ってるし、
余裕もって出社してるから時間的には余裕なんだけど、

かと言ってこのまま出社しないわけにもいかない。


いやぁ、そら私だってこんな子犬置いて行きたくねぇよ。


可愛すぎん？やだ、って何ほんと可愛い。

近年、英くんがこちらに居座る期間が増加しており、
週1回が週3回と段々増え。

今では週の半分以上一緒にいる。

まあ『別にいいよ』って言ってんのに、
律儀に生活費ちょこっと収めてくれてるから文句は言わない。


むしろ養いたい願望が着実に叶っていって嬉しい限り。



「やーだー」

『…っく…可愛く言えば許されるとでも…』

「違うの？」




やめてよォ〜…首こてんってしないでぇ〜…
上目遣いなんてしないでよ家出れないよ私…。



『…珍しい。何で今日そんな愚図るの』

「……Aさん最近残業多い」

『そら新人だからねー、漸く慣れてきたけどさ』



不貞腐れた顔をする英くんの頭を撫でる。

さらに体重をかけてくる英くんを、
腰に不安を抱きながら支えた。



「……明日、何の日？」

『何の日…って…誕生日でしょ、英くんの』

「………うん」

『何を不貞腐れてんのさー、可愛い顔が台無しだぞー』



ほっぺをうりうりとつねると、
「嬉しくない」とさらに顔を顰めた。

ありゃ、失敗した。



『……定時で帰るよ、今日は』

「！っほんと？」



アッ顔煌めいた、何やばい。



『うん、だから待っててくれる？』

「…わかった」



英くんの頭を撫でて、玄関の扉を開ける。

オートロックがカチャン、と音を立て、
私は廊下に崩れ落ちた。




……殺されるかと思った…、

可愛い……っマジで可愛い……っ！！


っえぇえ〜〜やだぁ〜〜マジで仕事行きたくない…
あんなの見せられた後に、ハゲた部長の顔見るの〜？




『……っすみません、今鼻血で地上絵作ってるんで、
今日ちょっと遅れます…っ！』

〈馬鹿なこと言ってんと早よ来い〉

　



めちゃくちゃ仕事して定時で帰った。





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