【及川徹】これを愛と呼ぶなら。#9

【2度目の3.14は】 ページ20

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昨年のクリスマスにAに貰った腕時計を

ちらりと見ると、



現在時刻はきっかり10時にさしている。



待ち合わせの時刻になっているのに、

Aがまだ姿を現さない。



前から結構待ち合わせギリギリにやってくる方だったけど、

こう何度も続くと流石に…。




昨日結構飲んでたから、酒がまだ回ってるのかもしれない。





…と、思わないこともないが。





やはり彼女は一人暮らしの身だから、

何かあったんじゃないかとそれなりに心配になる。



お風呂で倒れてるとか、

お茶入れようとして火消し忘れたとか。



嫌な方にばかり頭が回って。






及川「…あー、クソッ」






重い腰を上げて、Aの家へ向かう俺の足。



5分くらいの距離だから、別にさして苦ではない。


合鍵でエントランスを開けて、

エレベーターで7階へ。


〈椎名〉と書かれた表札がかけられた、

701号室の扉を合鍵で開けた。



玄関に入ると同時に、

Aの靴が玄関にあるのが確認できた。



デートの時に高確率で履いてくるお気に入りのパンプス。

これがあるということは、おそらくまだ家にいる。





なのに。




及川「Aー？いるのー？」





返事がなく、家に妙な緊張感が漂っていた。


比例するように、俺の心音も上がっていく。



最悪の状況が頭に浮かんで、

それを振り払うように頭を振った。



及川「Aー？」



Aの部屋を開けると、

ベッドにAが包まっていて。







及川「……え、」






どくん、と胸が締め付けられて。

頭が真っ白になって。








______…まさか、本当に…








及川「A⁉」

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