What color do you like? (ページ12)

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（黄）怪我の功名ページ12

〇一般人

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会社近くの、コーヒーが美味しいと有名なカフェ。

味はもちろんのこと、お店のアットホームな雰囲気もまたお気に入りで、出勤前には必ず立ち寄っている。

『カフェラテ、ひとつ』

私は優柔不断な上に冒険心が無いから、いつも同じ、カフェラテばかり頼んでしまう。

そのせいか、いつの間にか店員さんに顔を覚えられてしまっていて。いつもレジ横で商品を渡してくれる男の人が、私を見て、あ、というような顔をして。

「いつもありがとうございます」

こちらこそいつも素敵な笑顔をありがとうございます、なんてことはもちろん、言えるはずないけれど。

他の店員さんからいつも、店長、と呼ばれている彼。このお店特有の柔らかい雰囲気は、彼の人柄も大いに関係しているんじゃないかな、と思う。

「お仕事、頑張って下さいね」

この店に通う理由として、美味しい飲み物があると仕事が捗るから、というのはほとんどただの口実で。本当は、彼の笑顔が見たいから。

このカフェを見つけてから、家を出る時間が早くなったのは、少しでも長くこの場所に居て、あわよくば彼とお近付きになれたら、なんて思っているから。

『…また来ます』

「はい！是非、お待ちしてます」

でも、私は未だに彼について、笑顔が素敵な店長さんということ以外に何も知らない。

毎朝決まって、お近付きになりたいならまず名前を聞かないと、と意気込みながら家を出るものの、いつもお店に着くまでにその気持ちは萎んでしまう。

今日も駄目だったな、という気持ちと、いつもより多く話せたな、という気持ちが綯い交ぜになって。お店を出てから、つい大きくため息をついてしまった。

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