７８話 ページ34
桜哉said
「あ、見てこれとか良さそうじゃない？」
「うん。」
部活のない夏休みのある日、俺たちはこの辺で1番値段が安いらしい古着屋に着ていた。
あまり広くない店内には、女物、男物問わずたくさんの服や小物が並べられている･･････というより、
詰め込まれている、と言った方がいい気がする。これは店の広さに対して商品の量が多すぎるせいだ。
「うーーーん･･････。」
楯野は真剣な面持ちで服を見つめ、時々
「これもピーターとかに使えそう、ほら、見て！」
──などと俺に話しかけてくる。
が、俺は服のことなんてわからないし、私服の楯野が可愛いしでまともな返事はできてない。
「うん。」
「今絶対適当だったでしょ！ちゃんと見てよー。」
「だって俺服とかわかんないし。」
「えー、そうなの。じゃあ何でついてきてくれたの？」
「いや、別に、ほら、荷物持ちだよ。」
「でもそれじゃ選んでる間退屈でしょ。向こうで座って待ってれば？」
「･･････いや、それはいい。」
せっかく2人で出かけてるんだ。少しでも近くにいて、楯野を見ていたい。
「じゃあ服選ぶのちゃんと手伝ってね？」
「それは無理･･････。」
・
「ふぅ･･････、なんとか予算内でおさまった。」
会計を終えた楯野が、店から出てきた。服がいっぱいに詰まった袋を3つ、腕いっぱいに抱えている。
「ほら、それ持つから。ちょうだい。」
「うん、ありがと。」
そう言って楯野は袋を1つ俺に差し出した。
「いや、もう1個持つよ。」
「え、別に平気だよ？1個持ってもらえば。私、腕2本あるし。」
「俺も2本あるわ。それに俺荷物持ちで来たんだし。あと、ほら、男だし。」
「えー、なに桜哉くん頼もしい！ヒョロヒョロなのに！」
「ヒョロヒョロ言うな。」
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作者名：鈴蘭姫 x他1人 | 作成日時：2017年3月19日 10時
