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72話 ページ28

桜哉said



「そっち持ってー!」


「ネジ足りないんだけど!」


「ここ切っていいんだっけ?」


夏休みが始まった。


部員を総動員して大道具作りを最初の3日間で終わらせようという作戦らしく、


初日の今日は慣れない作業に苦戦するみんなの声でいつもにも増して騒がしい。





「ひゃっ!」


ドンガラガッシャーン!


突然短い悲鳴が聞こえたと思ったら、直後後ろで何かが崩れるような音が派手に響いた。


「いたた・・・・・・。」


振り返ると、そこには床に座り込んだ楯野と周りに散らばった大量の木材。


「え、ちょ、大丈夫?」


「痛い・・・・・・。膝取れた・・・・・・。」


「ちゃんとついてるよ。」


どうやら木材を抱えたままコケたらしいが、幸い怪我はなさそうだ。良かった。


「俺に言えば一緒に運んだのに。」


「あ、ほんと?これからそうしよー。」


「桜哉先輩優しいですね!」


「うわっ。」


いつの間に近づいてきたのか、坂本がいつもの猫なで声で擦り寄ってくる。


「私、優しい男の人好きですよっ。」


「・・・・・・へーそうなんだー。」


それとなく距離を取りながら申し訳程度の相槌を打つと、


「それじゃ、私お仕事に戻りますね!」


満足したらしく嬉しげに去っていった。





「愛ちゃん、すごい積極的だね・・・・・・。」


去っていく坂本の背中を見ながら、楯野が感心したように言う。


「だな。」


ちなみに、坂本のあからさまな言動により坂本が俺を好きな事は部内に知れ渡っている。


「そろそろ告白されちゃうんじゃない?」


実はもうされているのだが、あの時仲良くなったらもう1回告白するとか言っていた。


仲良くなったつもりは微塵も無いけれど、そのもう1回とやらがもうすぐ来るのだろうか。


「めんどくせー。」


「・・・・・・愛ちゃん可愛いし、ほんとは嬉しいくせに。」


「これっぽっちも嬉しくないね。」


「ほんと?」


「うん。」


「・・・・・・ふふふ、そっか。」


「変な奴。」


なんだか嬉しそうなのは何故なんだ楯野。

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作者名:鈴蘭姫 x他1人 | 作成日時:2017年3月19日 10時

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