７０話 ページ26
菜々花said
「──次、２年。照明は桃香。」
「はい。」
「音響、岡。」
「はーい。」
あっという間に７月になり、夏休みまであと15日くらい。
台本も役者も決まり、今日は裏方陣がどの役職につくのか発表される。
「舞台監督補佐は永瀬ね。」
「はい。」
「で、菜々花は衣装チーフ。」
「い、衣装ですか？そんなの去年ありましたっけ？」
「去年は、ほとんどの役の衣装が制服だったから衣装担当作らなかっただけ。」
「なるほど。･･････でも、チーフってリーダーですよね？２年でもいいんですか？」
「それが、衣装が大変そうな劇は久しぶりで３年にも衣装の経験者がいないのよ。」
「だったら、２年がチーフでもいいかと思ったんだけど、どう？」
「あ、はい！頑張ります。」
「シンディは･･････町のホールの受付だからカッチリした感じかな･･････。」
役職発表が終わり、役者達が練習をしているステージの隅で台本とにらめっこ。
とりあえず、それぞれの役の年齢、職業、性格を考えて衣装をイメージしてみる。
「私、シンディ！よろしく！」
「･･････あれ？」
３年生の先輩演じるシンディが、主人公のピーターに自己紹介する台詞が聞こえてきた。
それは、私がシンディにイメージしていたより若くて、無邪気な声色だった。
「･･････。」
──そうだ。
いくら私が役のイメージをしても、実際に演じるのは役者だし衣装を着るのも役者。
私の役に対するイメージから考えた衣装と、役者の演技が合わなかったら意味が無い。
だったら、役が決まりたてなこの時期に衣装を決めちゃうのは無理がある。
今だって、私はシンディの衣装をパンツスーツのようなものにしようと考えていた。
でも、先輩のシンディはホールの職員というよりバイトのお手伝いさんって感じで、
パンツスーツよりＴシャツにショートパンツのほうが合ってる。
具体的な衣装を考えるのは、役者達の役作りが完成してからの方が良いみたいだ。
それまでは、また色々とお手伝いでもしようかな。
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作者名：鈴蘭姫 x他1人 | 作成日時：2017年3月19日 10時
