"俺"の存在意義は

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北「母ちゃん。今まで育ててくれてありがとう。
　
　.........それから、俺消えちゃったみたい。
　ごめんな？母ちゃん。最後まで親不孝者でさ」








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電話は途中で切られてしまったけど
俺は言いたいことを言い切るまで

母ちゃんに向けて喋り続けた。









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(母ちゃん、大好きだよ...俺はずっと、忘れないからｯ...、幸せに暮してな...？)







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その後、携帯の中を確認してみたけれど
やっぱりどこにも俺の存在を確認出来るものは

全て消えてなくなっていた。




写真にも俺だけ写ってなくて

メールやLINEはその存在自体が消えていた。








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完全に理解してしまった瞬間
見えている景色全てが色を無くして

頭が真っ白になった。







だけどやっぱり



頭が真っ白になっても

俺という存在自体が無くなっても

俺の中には、アイツらが居て。



俺はアイツらの為に生きるしかない。
もう、死んだも同然なんだから

2回目の人生、アイツらの為だけに生きよう。





そう思えば、重かったカラダが嘘のように
我を忘れ、出来ることに没頭した。









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(本当は...アイツらの為なんかじゃない

　それしか、俺が生きる意味をもう、
　見出だせないから.........なんだ。ごめん、皆。)








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もはや俺の存在理由は
『キ ス マ イ』しかなかった。








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アイツらが戻ってくる前に、自宅に戻った俺は
必要のないものを全て捨てた。



俺が写ってない写真。

変装の為のマスクや帽子。

携帯。

身分証明書も。




最低限着れるものだけを残して
男物の服や靴も全て捨てた。







俺が居ないのに、女の俺の存在が感じられないってことは。

きっと今の俺も
この世に存在すら認識されてない筈だから。

この家も、たぶん使えなくなる。
携帯も、使えなくなる。





だから、旅行カバンに少しの服と財布。
後はアメニティグッズとタオルケット。



それから、
どうしても捨てられなかった手帳と写真を持って

俺は宛のない、人生という名の旅に出た。







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