【名探偵コナン】転生作家の心得 Act.2

64.『上賀茂愛梨の悩み　その肆』 ページ19

3分間ほど黙っていたが、私は口を開いた。

「これ、警察に提出して、DNA検査して来い。後、安室に送ってもらえ」

私の言葉に、安室は重々しく肯定した。そして、ちらりと出入り口を見ている。本当に、さり気なくだ。

血液の瓶の異質さ。何故、これをチョイスした。ヤンデレなのか？メンヘラか？いや、色々と問題のあるやつが入っていたら、すぐにゴミ箱、インだがな。

「でも、下手したら、安室さんにも被害が」

不安そうに愛梨は瞳が揺れる。水色の瞳が、涙で濡れてきている。

「それは無い。こいつ、本気で怖いくらい強いから。一般人が勝てないレベル」

私が安室を指差してそう言えば、安室は眉を顰める。

「酷い言いようですね……」

安室は、じとりと私を見ている。事実を言ったまでだろ、お前の登場回見てみろよ。映画見てみろよ。こっちは、悲鳴を上げたいレベルだったんだぞ。

私は未開封の手紙を手に取る。何となく、これだけは違うと思ったのだ。

「フリージアの隣に咲く、スターチスの貴方へ送る……」

酷く心が騒いだ。これは、嫌な予感というものだ。これからの予定を話し込んでいる安室と愛梨を余所に私は、眼を細める。

"貴方は日陰に徹するべき花ではない"

たったこの一文だけ、書かれていた。

これは比喩かと、眼を伏せる。

――なんの事をこの手紙の主は言っている？

愛梨の大量の気持ち悪い感情の篭った手紙よりも、この手紙は何よりも、吐き気がした。



｢先生も協力してくれますよね」

安室が海月の方を振り返る。海月はその手紙を便箋へと直してポケットへと入れた。海月は、頷いた。

｢身勝手な人間ほど、迷惑なものはないってことを教えてやれ」

海月の瞳は、酷く冷たさを湛えていた。


"フリージア(天真爛漫)の隣に咲く、スターチス(途絶えぬ記憶)の貴方へ"

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