61.『上賀茂愛梨の悩み』 ページ16
ぞわりと、背筋に寒気が走る。全身を舐めるような視線を感じて、慌てて振り返る。
しかし、人通りの少ない通りではないから、当然、後ろにも前にも人は多いわけで。その視線が誰のものかは分かるはずもない。
「気のせい……?」
首を傾げ、再び前を向くもその視線は消えなかった。
――気持ち悪い
愛梨は歩く足を速めた。その視線から逃げるために。
「宮林先生、機嫌がいいですね」
私の言葉に、そうかなと彼は返した。出版社が企画したスペシャル会談という企画で、同じ推理作家の宮林とこれからの推理小説という話題を話し合わされていた。知るかよ、これからの推理小説なんて。
男だが、以前の赤井よろしく長髪で、後ろで邪魔にならないように束ねている。
「漸く、欲しいものが見つかったからかも」
悪戯っ子っぽく笑う宮林先生に、私は肩を竦める。受賞を多くしてながら、望んでいなかったともとれるが。
「何ですか、それ」
気になって聞いてみると、大人の余裕を見せつける笑みを見せられた。何だろうか、私は一度死んだ分の人生を生きているはずなのに、此処に生きている歳上の人間には、そういった余裕がない気がする。
何で負けてんだ、私。
「では、先生方、現実に推理小説のようなことが起来てほしいとは思いますか?」
いや、十分起きてる。私の周り、結構起きてる。
宮林先生は、それはやだなあと笑った。そして、私に振られた。さて、なんて答えようかと思った時、ふと既視感を覚えた。
以前、同じようなことを聞かれた気がする。誰だったか、もう覚えていないけれど。確か、確かそのときは。
「『私を興奮させてくれるものならば』」
気づけば、そう言葉にしていた。宮林先生が、ニヤニヤと面白そうに笑っていたので、先生とにらんでおいた。
――でも。
でも、私は本当に、この言葉を今、思っているのだろうか。
昔の自分との齟齬が酷く感じられた。
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新章突入します。
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黒井蜜柑(プロフ) - 花枝さん» ありがとうございます!本当に、長らくお待たせしてすいません!週一掲載で続けていけたらいいなと思っていますので、なるべく終了まで更新停滞がないようにがんばります! (2021年5月24日 14時) (レス) id: 17dfef3a09 (このIDを非表示/違反報告)
花枝 - お待ちしておりました!おかえりなさい、これからも応援しています! (2021年5月23日 23時) (レス) id: 43f2320b1e (このIDを非表示/違反報告)
黒井蜜柑(プロフ) - きゃろさん» すいません、長らくおまたせしました!本当に更新停滞気味が多くてすいません。なるべく早くは続きを挙げたいと思いますのでもう暫くお待ちください。 (2021年4月29日 7時) (レス) id: 17dfef3a09 (このIDを非表示/違反報告)
きゃろ(プロフ) - おかえりなさいです!続きが更新されてるのが嬉しくて感想を書いてしまいました!続き楽しみにしています。 (2021年4月29日 2時) (レス) id: d6911c13cc (このIDを非表示/違反報告)
黒井蜜柑(プロフ) - 藤崎さん» 全然大丈夫です!期待に添えれるように、頑張っていきます。本当ゆっくりし過ぎですいません。 (2019年3月22日 23時) (レス) id: 16fd2908cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒井蜜柑 | 作者ホームページ:http://minanami2.naho.ayaka.
作成日時:2019年2月14日 16時