【名探偵コナン】転生作家の心得 Act.2

62.『上賀茂愛梨の悩み　その弐』 ページ17

はぁと、憂いを含めた息が漏れる。

ハイ、本日、十二回目。

私とカウンターの安室は視線が合う。そして、何も言わずとも頷いた。

――何かおかしい

カランカランと、誰か入ってくるたびに少し警戒しながらいらっしゃいませと彼女は言う。ここ最近、何故かそうなっている。

もう一度、ため息が漏れた。十三回目。

客が気づいていないのが幸いだというか。勿論、私を除いてだ。仕事はきちんとしているから、凄いのだが、愛梨の屈託のない笑顔が鳴りを潜めてきている。

何か会ったのは確実だ。コナン風に言うなら。

寧ろこの世界で何か無いことって、0%に等しいのではないだろうか。

「愛梨、これ以上、ため息をつくなら、洗いざらい話せ。お前じゃ、悩んでても無理だろ」

私が呆れたように言えば、愛梨は頬を膨らませて私に詰め寄った。

「さらっと、酷いですね、先生！！でも、そんなに、ため息ついてます？」

「30分の間に十三回」

愛梨は言葉に詰まる。

「まぁ、海月先生の言い方もきついですけど、悩みがあるなら、言ってください。力になれるかもしれませんし、なれなくても、少しは楽になりますから」

優しい言葉が愛梨にかけられる。流石、初主役映画で、何億円もの興行収入を叩き出しただけある。日本中の女が惚れ込んだ男だ。私は割愛させてくれ。

愛梨は少し考え込んだあと、周囲を確認した。生憎だが、もう私達しかいない。そして、腹を括ったらしく、実はと切り出した。

「此処最近、変な視線を感じるんです」

ストーカー被害を受けている人間の常套句じゃん。

私は珈琲の入ったカップを持ちながらそう思った。

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