【名探偵コナン】転生作家の心得 Act.2

67.『上賀茂愛梨の悩み　その漆』 ページ22

｢その男と、出来てるの、愛梨ちゃん……」

物陰から出てきた男に、単純に気持ち悪いと感じた。安室が愛梨を背中へと隠す。

｢いつもいつも……彼と一緒にいるよね……」

そう呟きながら男は、一歩前に足を踏み出した。瞳は、歪んだ熱を孕んだ色を浮かべている。

幾ら愛梨が武道の達人と言えども、この男の異常さは恐怖に値した。

｢俺はさ、愛梨ちゃん、君のことずっと見てた。君のこと、誰よりもずっと愛してる。知ってる？自分の愛した人よりも、愛してくれる人の方が、幸せにしてくれるんだよ」

黒色の長髪。女のように綺麗な髪を後ろで束ね、ハイネックにコートといった小洒落たストーカー。見るからに怪しいと言う風ではないが、その瞳は歪んでいる。

――こんな感情、向けられた事が、無い。

露骨な性的な視線なら単なる気持ち悪いですむ。だが、自分への好意への果てがこうであるならば、とんでもなく形容し難い。

――こんな時、海月先生なら。

冷静さも、その奥の怒りも、強さもかね揃えている海月先生(あの人)なら。

｢だから、自分に向けと。それは流石に、自己中心性的じゃないですかね」

安室の瞳が鋭く細められる。しかし、醜い感情に浸された男の脳には全く届かず、ふらりふらりと距離を詰めてくる。

｢その怯えてる姿も、生き生きと働いている姿も、勉強している姿も、笑った笑顔も、全て、全て魅力的だよ」

男の情熱が混ざった歪んだ瞳を見た瞬間、更に鳥肌が立った。吐き気がした。

｢一生、君を幸せにしてあげる」

その言葉に、喉奥がひゅっと鳴った。

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