【名探偵コナン】転生作家の心得 (ページ35)

今日:4 hit、昨日:18 hit、合計:552,950 hit

34.『漆黒とは別の謎が蠢く』ページ35

「見てください、先生！安室さんが解いちゃったんです！」

ポアロの扉を開けると、興奮気味で迫ってきた愛梨。私はそれを腕で抑え、店内へと入り、珈琲を頼んで、席に着いた。

「へぇ、凄いね」

PCを開き、ネットニュースを見る。そこには、新たな被害者が出た事が知らされていた。もうすぐ東京タワーの犠牲が迫っていると、物騒な黒いヘリを思い出した。

「ああ、先生！全然興味無い！少しは興味持ってくださいよ、推理作家でしょう！？」

愛梨を適当にあしらい、私は別のニュースへと眼を向ける。当たり障りのないものだ。

「その事件は、毛利探偵が請け負っているのだろう？なら、もう私に興味を抱くほどの謎は残らないだろ」

ブラウザを消した。それよりも、気になるのは私を訪ねてきた人間だ。

「そういうものですか？私は、どんなに解かれても気になります」

愛梨は私の注文した珈琲をテーブルに置きながら、持論を持ってくる。

「君はそうであって、私はそうではない」

そうバッサリと切り捨てる。

「まぁ、愛梨さんも、僕は毛利先生から少し聞いた話を元に展開した推理なので、言いふらさないでくださいよ。特に、海月先生の前は恥ずかしいですから」

安室がはにかむ笑顔と共にそんなことを言うものだから、近くの女子大生が小さく歓声をあげた。いつから此処は、アイドル謁見所になったんだろうか。そう思いながら、PCの画面を眺める。

あれ、メールが一件来てる。

「でも、私思いつきませんでしたし！ね、先生、少しく……」

愛梨の言葉を聞く前に私は、思わず強くカップを置いてしまった。彼女の肩が揺れる。その場が静まり返った。

「せ、先生……？え、何か怒って……」

私の行動に唖然とする客と店員。

「悪い。手が滑った」

周囲の人間に謝って、私は画面を見直す。もう一度開き、その内容を見る。

"先生は僕と同じなんだね"

差出人不明のメール。そこに書かれた一文。

私のPCのメアドを何故知っているのかはさておき、誰なんだ。

同じとはどういう意味だ？

「海月先生！」

名前を強く呼ばれて、私は顔を反射的に上げた。安室が近くに立っていた。

「顔色、良くないですよ。ゆっくり休んだらどうですか？」

そう言って、彼の手でパPCが閉じられた。顔面蒼白になっていたのか。絶対、何かあったって思われるな。いや、心臓が飛び出そうなくらい、ビビってるけど。

「……ああ、すまない」

閉じたPCから伝染するように、脳裏には、あれが染み付いていた。