32.『恩師と転生作家』 ページ33
幸村教授は、私の大学時代の恩師だ。私が大和さんのところで出版し始めたのは高校だが、技術面の向上は幸村教授の教えが大きい。更に高みへとあの人は向かわせてくれた。
だから、あの人には頭が上がらないのである。
「こんにちはー……」
部室へと行くと、私の来訪に後輩達が花を開かせた。どれだけ嬉しいんだと若干引きつつ、駆け寄ってきた後輩達を適当にあしらう。
「幸村教授は?」
私がそう尋ねると、後輩達は呼ばれてるから少し出ていると言った。おいこら、呼んでおいてそれは無いだろ。
「ね、先生!俺の作品見てくださいよ!」
文芸部の部員、櫻井くん(二年生)がノートパソコンの画面を持ってくる。印刷してもってこい。添削は紙の方がやりやすいんだよ。
「どう、先生?」
ざっと見てしまって私は、眼を細める。いや、これってもろもろ……。頭がガンガンと痛い。
「ワンピース真似んな」
バレたかと櫻井くんは舌を出した。分かるけどね、ワンピース超大作だもんね。分かるよ、わかるけどね。
「櫻井くん、ワンピース作るって言い出したんですよ」
「何でそういう話をするのか私に分かるように説明してくれ。此処、日本の最高学力の大学だよな」
額を抱えて、肩を竦める。この部室は最難関の東都大学に相応しくない気がする。
「海月先生、頭の良い人は何処か可笑しいんですよ」
「それ、自分にも返ってきてる事、分かってる?」
私の言葉に笑いあうと、そこへ部室の扉が開いて、初老の男性が入ってきた。
「教授!」
灰色の髪をもつ初老の男性を見て、部員たちが花を開かせる。私は軽く会釈をする。
「遅くなったね。やあ、Aくん、久しぶり」
幸村教授は、空いている席へと着く。相変わらず、食えない人だ。
「最近も来ましたよね、教授」
私がそう突き刺すと、にへらと男は笑った。そして思い出し方のように、話を変えた。
「そういえば、君のことが知りたいといってうちの部室を訪ねてきた子がいたよ」
教授の言葉に、目を丸くする。愛梨以来の変人があられるのは止めてくれよ。
「愛梨の時みたく個人情報を流出するのは止めてくださいね」
私の釘刺しに、わかっているようと幸村教授は言って、女学生の作品の添削を終えた。
「ただ、彼には君のことを一言で表わすならと言われてしまってね。こうとだけ言っておいたよ」
幸村教授は意地悪く私を見る。その表情に私は肩を竦めた。
「偏食家ですかね」
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黒井蜜柑(プロフ) - トめAと@とまと:カド松さん» ありがとうございます。 (2022年5月17日 22時) (レス) id: 17dfef3a09 (このIDを非表示/違反報告)
トめAと@とまと:カド松(プロフ) - はい、マジ好きです応援します (2022年5月17日 21時) (レス) id: 8b7bdbc23e (このIDを非表示/違反報告)
黒井蜜柑(プロフ) - トめAと@とまと:カド松さん» それは凄く嬉しいです。愛梨ちゃんがいてこそのこの作品なので是非とも応援してください。 (2022年5月17日 21時) (レス) id: 17dfef3a09 (このIDを非表示/違反報告)
トめAと@とまと:カド松(プロフ) - 夢主っぽいのがいるときいて何だ地雷か?って思ったらバリタイプだだった。 (2022年5月17日 21時) (レス) @page49 id: 8b7bdbc23e (このIDを非表示/違反報告)
黒井蜜柑(プロフ) - 目覚ましさん» そう言って、いただいて幸せです! (2018年12月14日 16時) (レス) id: 16fd2908cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒井蜜柑 | 作者ホームページ:http://minanami2.naho.ayaka.
作成日時:2018年11月10日 22時