29.『とある大女優とのデート』 ページ30
「やっぱり似合ってるわ、先生」
試着室のカーテンを開けて満足そうに頷くベルモット。私は涼しい足元と、下ろされた髪に妙な違和感を感じていた。
要するに、着せ替え人形にされていた。
「先生、素材がいいからお洒落をもっとするべきだわ、勿体無いわよ。これ、プレゼントするから参考にしてみてちょうだい」
ベルモットがさらりとカードで払ってしまったのを見て、唖然とした。貰えないと着ながら何を言っているのだと思うが、抗議するも受け入れてもらえなかった。
「私が好きに贈ったのだからいいでしょう?」
いや、そもそも貴方が私と会ってる時点で抗議したいです。その後、色々なところに連れ回された。ベルモットの車に乗ったのは、とても新鮮だったが。
黄昏の帳が織り始めている。灼ける赤色が一面を照らしながら、その役目を終えた空は黄色と紫、藍色のグラデーションを魅せ始めていた。
「此処が先生のお気に入りの場所?」
茜色に染まって隣に立つベルモット。サングラスをしてるとはいえ、少し眩しそうだ。
「いえ。そういう訳じゃ無いんですが、このロケーションが好きなだけです」
すべての境。私はこの時間帯が好きだ。
「そう。少し先生のこと知れて嬉しいわ」
何それ、アイドルの情報か何かなの?
彼女の言葉に戸惑いつつ、私は渡そうと思っていたものをバッグから取り出す。中から出したのは包装紙。
「あの、よかったらこれ。大したものじゃないですが」
私の出した小包をベルモットは受け取る。そしてそのまま、封を開いた。
「あら、かわいい。なに、うさぎ?」
ベルモットはぶら下げたストラップを見る。私が好きなマスコットで、もちうさというものだ。それを説明すると、彼女はしげしげと見つめる。
「私の好きなタイプの、"みたらしもちうさ"なんで、気に入らなかったらすいません」
みたらし団子とうさぎのコラボレーション。正直一番かわいいと思っている。
「いいえ。先生がせっかく選んでくれたものだもの。大切にするわ」
にこりと笑って、ベルモットは自身のスマホに手早くつけた。何となく繋がりを持ったなと後悔を少しした瞬間だった。
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黒井蜜柑(プロフ) - トめAと@とまと:カド松さん» ありがとうございます。 (2022年5月17日 22時) (レス) id: 17dfef3a09 (このIDを非表示/違反報告)
トめAと@とまと:カド松(プロフ) - はい、マジ好きです応援します (2022年5月17日 21時) (レス) id: 8b7bdbc23e (このIDを非表示/違反報告)
黒井蜜柑(プロフ) - トめAと@とまと:カド松さん» それは凄く嬉しいです。愛梨ちゃんがいてこそのこの作品なので是非とも応援してください。 (2022年5月17日 21時) (レス) id: 17dfef3a09 (このIDを非表示/違反報告)
トめAと@とまと:カド松(プロフ) - 夢主っぽいのがいるときいて何だ地雷か?って思ったらバリタイプだだった。 (2022年5月17日 21時) (レス) @page49 id: 8b7bdbc23e (このIDを非表示/違反報告)
黒井蜜柑(プロフ) - 目覚ましさん» そう言って、いただいて幸せです! (2018年12月14日 16時) (レス) id: 16fd2908cb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒井蜜柑 | 作者ホームページ:http://minanami2.naho.ayaka.
作成日時:2018年11月10日 22時