第5話 蓮(れん) 4 ページ13
死に場所には、蓮の花がよく飾られる。
そうだ、死への渇望は、最近になって突に出てきたものではない。
元からその願望は自分の中に確かにあったのだ。
「死ねる方法をしりませんか」
「随分重いお話ですね。何故死にたいのですか?」
君は重いと言いながらも、楽しそうに笑っている。
それなのに話に対してはどこか真剣な声で……ああ、段々君がわからなくなってきた。
「何となくかな」
「何となくで死ぬのは勿体ないよ」
「じゃあ、自分に価値が見いだせないし、生きてるのは疲れるから」
「……………………。後半はともかく、貴方に価値がないなんてことはないと思うよ。少なくとも……いや、これは、なんでもない!とにかく、価値がないなんてありえないよ」
「そうかなぁ」
「そうだよ。お医者さんだっけ、それもよく合ってると思うもの」
「僕は向いてないと思います」
「どうして?」
「どうしてって……学生のうちから、こんな授業サボって女の子と遊んでるクズに自分の健康や命、普通委ねたくないでしょうよ」
「お医者さんが人の命を預かってる、それはそうです。でもですね、私は思うんですよ、医者だから、教師だから、人生のすべてが潔白である必要はないって」
そうあろうとする姿勢は美しいと思うけどね、と付け足すと、彼女はまた笑った。
「君は"やさしい"んだね。まるで、この世界の住人じゃないみたいだ」
「××君こそ、今日は随分ヤサシイんですね。熱でもあるのかな?」
「あーやっぱ前言撤回しようかな。うん、それがいい」
そんな意地悪なことを言ってるのに、何故か君は先程より嬉しそうにして、僕へと……笑った。
よく笑う子だな、と思った。
「うそうそ!××君はいつでも優しいって思ってるよ」
「見え見えのお世辞をどうも……」
「本気だって!……貴方は優しいよ」
どこか傷ついたよな顔で、彼女はまた笑った。
その表情さえ愛おしくて、もう戻れないような気がした。
「僕は……やさしいのかな」
「やさしいよ。ほら、授業にも出ずに、私に会いに来てくれるし!」
「………それは僕が不良なだけじゃないかな」
我ながら、本当にそうだ。親にばれたらひどく怒られそうな気がする。
でも君に会えるならその程度どうでも良いか、そんな気もした。
「そんな優しい××君にお願いがあるんですよ」
「ナンデスカ」
「なんで既に棒読みなの!今週いつか暇?出来たら、夕方か夜がいいな」
「それは……」
デートですか、とは言えなかった。
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作者名:Sei | 作成日時:2017年6月17日 9時