第5話 簾(れん) 5 ページ14
「……金曜なら、4時に学校終わるから、それ以降ならいつでも」
「金曜?それはよかった、じゃあ4時半にここに来てね。お出かけしましょう‼」
この神社も、あれから随分経ったが、見た目も何もろくに変わらないなと思う。
ただ見ているだけなら、感慨も何もない。
君がいなくなったこと以外、何も変わらない。
「秀さーん。神社見ながらぼーっとしすぎじゃないっすか。最近のお前らしくない」
「なんだよオレだってたまにはおとなしいんだよ!つーか最近ってナンデスカ」
「いや、今日はここに来てから随分昔のもーちょい暗かったお前みたいだなと。高1くらいの時のさ。女子にも怖がられてたころの」
「そんなに変わった?」
「周りからすりゃお前変わったよ、いつからかな。確か――」
□■□■□
待ち合わせ。時間通りに到着。
元来走るのなんて大嫌いだが、君との約束が消えてしまうのが怖くて、久々に走った。
階段をのぼると、そこには君がいた。
「時間ピッタリですね。きっと良い男になれますよ」
「そりゃどうも……」
「嬉しくなさそうですね?」
「いえ、トテモ喜んでいます。で、どこに行くの?あんまり遠くに行ける時間はないんじゃない。君は女の子だから」
「今日は時間は大丈夫ですよ。でも行きたい所はあるんだ。二駅先で、お祭りやってるんですよ。行こう!」
「こんな冬に?」
「世の中には冬のお祭りもあるんです」
「へぇ、この近所にもあったのか……。で、何がお目当てですか。屋台?」
「なんで食べ物!?それもだけど、花火が見たいんだ」
「それは、意外と普通な……」
「私のこと変人扱いしてたのかなー?いまいちそれは否定できないかもしれないけど、どうしても見たかったんだ」
「友達と行けばよかったんじゃないの」
「……えーと、ほら、私友達いないから」
「彼氏と行けばいいじゃないですか」
「そんなのいないし出来るわけないもの。……とにかく今日は××君とお出かけするの!」
「そうですか」
「この私と出かけられるというのに何で嬉しくなさそうなの?ほら、もっと喜んで!」
「君が美少女だったら喜んでたさ」
「……それはそれは、ごめんなさい」
嘘だよ、うれしいさ。
と心の中でそうつぶやいた。
自分の中にいつの間にか在った確かな心、奥深くにひた隠しにしていた。
だけどもう、限界かもしれない。
第5話 連(れん) 6 ※閲覧時、若干注意→←第5話 蓮(れん) 4
3人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Sei | 作成日時:2017年6月17日 9時