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起きる前 ページ5

隣に座る機械はどこか不安そうな顔をしていた。

 俺だって不安だ。このまま目を覚まさないかもしれない、そんなマイナスなことばかり考えてしまう。

 もう3日も経った。3日も経ったのにあいつは寝たまんまだ。

 機械から目を覚ましたと聞いて病院に来てみればこれだ。

 目を覚ましてすぐ錯乱して倒れたなんて。馬鹿な奴。

 くそ。

 それにしても何で、あいつと鉢合わせするようにしなくちゃいけなかったんだ?

 そうしなくても良かったはずなのに、どうして?

 親父は何を考えているんだ?

 多分、どちらかを……。

 どっちかと言えば、こいつを……。

 分かってる。

 こいつは面倒臭い。

 殺したやつは行方不明扱いになるから、探さなくちゃいけなくなる。探すのには人と金が沢山いる。

 他には……、殺せれば誰だって良い訳じゃない。幸せそうな家族じゃないと駄目だ。物覚えが悪い。精神的に不安定。一番何をするか分からない。嫌いなものが多い。馬鹿。

 いや、自分よりはずっと頭が良い……。良かった? 過去形だ。

 そうだ、4、5年前はこんなじゃなかった。

 誰よりも真面目で、優しくて、良い奴だった。

 だから、俺は……。

「アノ……」

 耳障りな合成音声。

「何だ」

「私ハ……、ドウスレバイイデスカ?」

「なぜ俺に聞くんだ」

「何カデキルコトガアレバ、ト思ッタノデ聞キマシタ」

「じゃあ黙って出ていけ」

「……ハイ」

 言われた通りにそいつは病室から出ていった。

 出ていった直後、俺の携帯が鳴った。この音は電話だ。

 俺の女からじゃない。あいつらには電話はしてくるなと言ってあるから。

 俺に電話をしてくるのは仕事関係か家族だけだ。

「もしもし?」

 電話に出る。

「もしもし、私です。セシリアです」

「あぁ、お前か。何の用だ?」

「今どこにいますか? 3日前の事件のことで見せたいものがあるんですが……」

「そうか、今病院にいるから来てくれ。今車だろ?」

「はい、分かりました。十分程でそっちに着くと思います」

「おう。俺はあいつの病室にいるからそこまで来てくれ。もしかしたら目が覚めるかもしれないからな。あっ、そうだ、ついでになんか飲み物買ってきてくれ、この前CMやってたやつがいい。あの緑色のやつ。金は後で出すからさ」

「はい、あれば買ってきます。……病室って307でしたっけ?」

「あぁ、そうだよ。じゃ、切るな」

 電話を切ると、赤い目がこっちを見ていた。

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秋瀬 チグ - 僕にもその文才分けて欲しいです・・・!分かりやすく、丁寧で読みごたえがありました。これからも頑張って下さい!コロナに気を付けて。 (2020年12月25日 23時) (レス) id: 4021f55887 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠 - 起こっていることが想像しやすい綺麗で簡潔な文章…見習いたい…そして、続きが凄く気になる!これからどうなっていくのか…無理せず更新頑張ってください! (2020年1月2日 23時) (レス) id: 9fc4b0a5df (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:衛生兵079 | 作成日時:2018年11月5日 21時

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