逃走 9 ページ50
「ちょっと俺の腕掴んでくれねぇか？」
そう言ってアーロは両腕を差し出したので、言われたとおりに手首のあたりを掴んだ。
「掴みましたけど、何です？」
「いや、ありがとよ。じゃあ、そのまましっかり掴んで離さないでくれよな」
それが言い終わるか否かのタイミングでアーロの姿は一瞬で人間の男性の姿から、か弱そうな髪の長い少女の姿へと変化した。
それをそのまま何をするつもりかと見ていると、アーロは予想もしなかった行動に出た。
「いや！ やめてください！ 離してください！」
まだ幼さが残った少女の声が廃工場に響く。
「え？ な、何を……」
「お願いですから離してください！ いやっ！ 誰かぁ！」
突然のことに呆気にとられて何もできずにいると、背後から人の気配と声がした。
「おい！ お前、何をやっているんだ！」
振り向けば若い警官2人がシャッターの隙間から入ってきて、こっちに向かって走ってくるのが見える。
この近辺の見回りでもしていたのだろうか。
「助けてください！」
アーロが叫ぶと、私の手を強引に振りほどいて警官の方へと走っていく。
「え？」
もう大丈夫。という警官の声とこちらに走ってくる警官の姿を見てようやく逃げなくては、そう思ったが時すでに遅くあっという間に警官の片方に地面に押し付けるようにして取り押さえられてしまった。
「貴様、あの少女に何をするつもりだった」
もう片方の警官が目の前に立ち厳しい口調で言い、抑えている方も私をぎっと睨みつけている。
「なぁ、こいつさっきの通報にあった奴じゃないか？」
「たしかに。この妙な格好……」
よくない。これはよくない。
「え、あの、私は……」
しどろもどろになりながら警官の後ろに目をやると、元の姿に戻ったアーロが手に持った羽をひらひらさせながら、イヒヒと笑って影の中に消えていくのが見えた。
あぁ、ハメられた。
そうだ。悪魔狩りからは逃げ切ったし、私達はもう味方同士ではない。
それに忘れかけていたけど悪魔というのはそういうものだった。
アーロの姿は影の中へと完全に消え、警官達と私がその場に残されている。
「とにかく、話は……」
「あ、おい。あの女の子は？」
立っている方の警官が後ろを向いて、少女の姿が消えていることに気がついた。
「あれ？ 確かにさっきまでいたのに……」
ちょっと収まりきらなかったので続編に続きます。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 10人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あんみつすむーじー(プロフ) - ああああ！！モノクロ優しいｯｯｯ！クエスチョンいい子ｯｯｯ！最推し尊いｯｯｯ！！好きｯｯｯ！ (2022年3月22日 13時) (
レス) @page42 id: 61f5df45e6 (このIDを非表示/違反報告)
凪 - ヤバいヤバいヤバい!!!モノクロとクエスチョンの絡み大好きなんだが！特にモノクロが弱ってるときのやつが好き!!! (2021年12月26日 0時) (レス) @page39 id: 7248708266 (このIDを非表示/違反報告)
玄米 - 新作ぅ！！嬉しいですよぉぉ！！めっちゃ早くに見れてすごく嬉しいです。イラスト集のやつに載せてたやつですよね？めっちゃ見てぇと思ってました。ありがとうございます！！by謎にコメント率高いやつ (2021年4月19日 16時) (レス) id: 1208f61fed (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：衛生兵079 | 作成日時：2021年4月19日 2時
