白黒と疑問

死なないで 6 ページ32

これでもう安心だ。

　しかしいくら待ってもモノクロは目を覚まさない。

　呼吸はしているし、心臓もしっかり動いている。なのに何故？

　寝ている？

「モノクロ？」

　返事はない。

　触っても何の反応もない。

　とりあえず硬い床に寝かせておくのはあれなので、モノクロの部屋まで運びベッドに寝かせる。

　あんな怪我を負ったし、疲れているんだろう。すぐ目を覚ます。

　そう思っていたけど、モノクロは1日経っても3日経っても、1週間経っても目を覚まさなかった。

　その間もずっと眠り続けるモノクロを見ていたが一向に目を覚ます気配はない。

　まさか、もしかして、算数の勉強と一緒に悪魔について色々教えて貰っていたときに聞いたことを思い出す。

　悪魔には魔力、ゲームで言うMPみたいなものがあって、大怪我をしたり、能力を使い過ぎると魔力が0になってしまうことがある。

　魔力が0になってしまうと悪魔は強制的に眠ってしまい、最大まで回復するまで無防備の状態で眠ったままになってしまう。

　しかも魔力が多く力の強い悪魔ほど最大になるまで時間がかかる。

　だからその隙に殺されてしまったり、それを利用して魔力を溜まらないようにして封印することがある。たしかそんな感じだったはず。

　大怪我、力の使い過ぎ……。

　僕がモノクロのところへ行く前から、モノクロは悪魔狩りの人間達と戦っていた。

　あいつらは前に見た悪魔狩りとは違っていた。

　人数も多くて、見たことのない、初めて見る武器しか持っていなかった。

　武器になにかあったんだろう。

　モノクロに穴を開けたあの銃には回復を妨害する効果が、それ以外にも何らかの効果がある武器を持っていたはず。

　今日はあまり体調が良くないと言ってもいたし……。

「あはは、グッスリ眠ってるねぇ。首無しのクソ悪魔さんよぉ」

　突然、聞いたことのない男の声が部屋に響く。

「誰だ！」

　そう叫んで、声のした方へと視線を向ける。

　窓を背に胡座をかいて空中に浮いている、真っ赤な角に蛇のような尻尾、そして白髪で黒い服の男がそこにいた。

　ドアや窓が開いた形跡も、さっきまで気配もなかった。突然そこに現れたようだ。

「んん？ 俺ぇ？ 俺はリリスって悪魔だよ。まさかお前知らないの？」

　蛇のような目がこちらを見る。

「知らない」

「は？ マジで言ってんの？ 俺のこと知らないとかヤバくない？」

　知らない悪魔だ。モノクロとあの角の人しか僕は知らない。

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