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侵入者 ページ22

リビングから声が聞こえる。

 テレビの音じゃない。

 それに人間の気配がする。

 こんな夜中にあの契約している人間が訪ねてくるはずがない。

 泥棒だとしたらどうやって入った? この建物の警備はただの人間なら潜り抜けるのは厳しい。

 吸血鬼? 淫魔? 使い魔? 天使? 悪魔? いや、そんな感じじゃない。この気配は間違いなく人間だ。

 すでに自身の影を伸ばし、すべての出入り口と窓は塞いでいる。

 リビングへ入ると、暗い部屋の隅で50代後半から60代前半ほどの男女が抱き合い震えていた。

「あっ……」

 先にこちらに気がついた女の方が小さく悲鳴を上げ、男の方もこちらに気がついたようだった。

「何者だ」

 2人はびくりと肩を震わせる。

 しばらくの沈黙の後、男が恐る恐るといった様子で口を開いた。

「……たっ、助けてくれ。私達は、私達はただ、ここから出ていきたいんだ」

「質問に答えろ」

 影を鋭く尖らせて伸ばし、2人の喉元に突きつける。

 女は涙を流し、ヒューヒュー呼吸するばかりで答える気配はない。

 すると男がまた震える声で答えた。

「私は、私の名は、ウィリアム……、ウィリアムブラウンだ、で、こ、こっちが、妻のメアリー……」

「で、どこから入った? 何が目的だ?」

「無理矢理連れてこられたんだ、私達の意思じゃない」

 男がそう言うと、女が涙をぬぐい甲高い声で叫んだ。

「あの化け物よ! あの化け物が私をこんな目に!」

「は? お前ら」

「ねぇ、モノクロ。何してるの?」

 急に部屋の明かりがつき、背後から声がして振り向くとそこにはクエスチョンが立っていた。

 そして仮面の上から目を擦る様な仕草をしながらすぐ横まで来る。

「明かりもつけないで、誰とお話ししてるんです?」

「あぁ、人間が……」

 2人がいた方を向くとそこには人間の姿はなく、代わりにいつもクエスチョンが身に付けている帽子とそれを被った杖がそこにいた。

 それらは小刻みに震えていた。

「あ、父さん、母さん、そこにいたの」

 その声を聞いた帽子と杖は逃げようとしたがあっさりと捕まり、帽子はクエスチョンの頭に、杖は右手にしっかりと収まった。

「じゃあ、モノクロ。おやすみ」

 クエスチョンは呑気にそう言って、先に部屋へと戻って行き、部屋に一人取り残される。

 知らなくてもいいことを知ってしまったようで、気分が悪い。

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あんみつすむーじー(プロフ) - ああああ!!モノクロ優しいッッッ!クエスチョンいい子ッッッ!最推し尊いッッッ!!好きッッッ! (2022年3月22日 13時) (レス) @page42 id: 61f5df45e6 (このIDを非表示/違反報告)
- ヤバいヤバいヤバい!!!モノクロとクエスチョンの絡み大好きなんだが!特にモノクロが弱ってるときのやつが好き!!! (2021年12月26日 0時) (レス) @page39 id: 7248708266 (このIDを非表示/違反報告)
玄米 - 新作ぅ!!嬉しいですよぉぉ!!めっちゃ早くに見れてすごく嬉しいです。イラスト集のやつに載せてたやつですよね?めっちゃ見てぇと思ってました。ありがとうございます!!by謎にコメント率高いやつ (2021年4月19日 16時) (レス) id: 1208f61fed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:衛生兵079 | 作成日時:2021年4月19日 2時

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