白黒と疑問

限界 ページ21

あいつが家に来てから一週間、正直もう耐えられない。

　悪魔になったばかりだと言っても、元々人間だった訳だし、体も大きいからそこそこの年齢だったはず。

　正直他人の過去なんてどうでもいい、何があったかなんて知らないが酷すぎる。

　食事では食器の使い方が分からず、基本的には手で掴んで口からボロボロこぼしながら食べる。

　火がついたガスコンロや沸騰したお湯に手を突っ込んで怪我をする。

　風呂には服を着たまま飛び込んで、そのあとビシャビシャのまま家中を歩き回る。

　電子レンジや電話の使い方がわからないのに、テレビとゲーム機だけは使い方をよく知っている。

　眠くなったら所構わず、どこでも寝る。廊下や浴槽、テーブルの上はまだいい方で、昨日は窓から上半身がはみ出したまま寝ていて、今にも落ちそうになっていたのを慌てて室内に引きずり込んだ。

　足し算や引き算はかなり時間がかかるが出来る。しかし、3桁を越えると全然駄目、かけ算とわり算は全く出来ない。

　文字は読めるのに、書くことが出来ない。

　無知な幼い子供の相手をするほうがマシ。中途半端に知識と力があるから、余計に手に負えない。

　一応、色々と教えてはいるが、次から次へと問題を起こす。

　あいつを放り出してどこかに行ってしまいたい、なんて思うがそれは出来ない。

　他でもないザカリーから面倒を見ろと言われているのだ、拒否すればどうなることか。

　だが他人の世話なんて一度もしたことがない上に、あいつはあの調子、本当にもう限界かもしれない。

　あいつの相手に疲れ、休もうと思ってベッドに横になっても休めない。

　寝ようとするとあいつは必ずやって来て、何をするでもなくただ黙って見てくるから寝ようにも寝れず、ここのところずっと体調が悪い。

　質問ばかりしてくるから何となくでクエスチョンとあだ名を付けてから、よりしつこく付きまとうようになってしまった。

　あだ名の件は自分が悪かったが、その他のことは全部あいつが悪い。

　そして今日、まともに眠れていなかったせいで、廊下の真ん中で倒れてしまった。

　気がつくと自分のベッドの上に寝かされていて、側にはバケツを持ったあいつが……。

　避けようとしたがすでに遅く、まともに氷水を被った。

　あいつ曰く、具合が悪そうだったから冷やしてあげようと思った、とのこと。

　結局余計な仕事を増やされた上に、体調もより悪化した。

　…………どこかに逃げたい。

侵入者→←契約違反

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