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あの日の夢 1 ページ18

僕が死んだ日の夢を見た。

 頭から血を流し、折り重なるようにして倒れ死んでいる父さんと、母さん。

 右手にしっかりと持った血がついたガラスの置物。

 ガラスに反射した自分の顔に寒気がした。

 僕は悪くない。

 父さんと母さんが悪いんだ。

 可哀想だと思って、ゲームを買ってやったのは間違いだった。

 ただ暗くて狭い部屋で、ゲームしてるだけの役立たずはもう捨てようって。

 車に乗せていって遠いところに置き去りにしてしまえば、きっと帰って来れないって。

 もう34年も我慢した、もう限界だって。

 あんな子、生まなきゃよかったって。

 僕は、僕は悪くない。悪くないんだ。

 僕のことを見てくれなかった父さんが悪いんだ。

 僕のことを大事にしてくれなかった母さんが悪いんだ。

 手から滑り落ちたガラスの置物が大きな音を立て割れた。

 その音でハッとして、何となく部屋を見回して気付いてしまった。

 たくさんの金色のカップとか、メダルとか、賞状とか、写真が飾られてて、写真の中では父さんと母さんが見たことのない幸せそうな顔で笑ってた。

 そして、二人の間に父さんによく似た口元で母さんによく似た目をした男の子がいた。

 その男の子も幸せそうに笑っていた。

 棚にあった僕と同じ名前が書かれたアルバムを引っ張り出して他の写真を見る。

 母さんに抱き締められている写真、スポーツをしている写真、友達といる写真、女の人と手を繋いでいる写真、ページをめくればめくるほど写真の男の子は成長していく。

 どれも幸せそうな顔をして。

 何冊もアルバムをめくって、そして、最後の一枚。

 父さんと母さん、それから知らない女の人とスーツ姿のすっかり大人になったあの男の子が笑顔で写っていた。

 そのページには丁寧に折り畳まれた手紙が挟まっていた。

 視界がぐらぐら揺れる中、震える手で手紙を開く。

『大好きな父さんと母さんへ

 こんな歳になってから手紙を書くのは少し恥ずかしいけれど、僕らが結婚することになって、それで、この機会にと思って書いたんだ。

 まず、母さん。

 僕が小さい頃から家を出るまで毎日欠かさず、美味しいご飯を作ってくれてありがとう。

 母さんが作る料理は世界で一番最高だよ。どんなに元気がないときでも母さんの料理を食べるだけで、元気になって明日も頑張ろうと思えた。

いつも優しくて、でも間違ったことをしたら叱ってくれて、芯の通った素敵な人。

あの日の夢 2→←悪魔狩り活動報告書 2



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あんみつすむーじー(プロフ) - ああああ!!モノクロ優しいッッッ!クエスチョンいい子ッッッ!最推し尊いッッッ!!好きッッッ! (2022年3月22日 13時) (レス) @page42 id: 61f5df45e6 (このIDを非表示/違反報告)
- ヤバいヤバいヤバい!!!モノクロとクエスチョンの絡み大好きなんだが!特にモノクロが弱ってるときのやつが好き!!! (2021年12月26日 0時) (レス) @page39 id: 7248708266 (このIDを非表示/違反報告)
玄米 - 新作ぅ!!嬉しいですよぉぉ!!めっちゃ早くに見れてすごく嬉しいです。イラスト集のやつに載せてたやつですよね?めっちゃ見てぇと思ってました。ありがとうございます!!by謎にコメント率高いやつ (2021年4月19日 16時) (レス) id: 1208f61fed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:衛生兵079 | 作成日時:2021年4月19日 2時

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