対峙 ページ42
よく見ればスイッチだけじゃなく、部屋全体に血が付いている。
床にはぐちゃぐちゃの赤いなにかが2つ落ちていた。それから血が出ているようだ。
「やぁ、待ってたよ」
聞いたことのある声。インターホンに出た声だ。
部屋の端の方に置かれた大きめのソファーには若い男が座っていて、手に持った血塗れのナイフをいじくり回していた。
「ほーんと遅かったね。僕待ちくたびれたよ、君だろ? 警察に頼まれた奴って」
黒髪で黒いパーカーに黒いズボン。全身黒ずくめの見るからに怪しい奴。
こんな奴もらった写真にはいなかった。知らない奴だ。
「家族は? 俺が欲しかったものはどこ?」
こんな奴はいらない。
部屋番号は間違えていないはずなのに、自分が欲しかったものはどこへいったんだ?
ふと視界に入ったぐちゃぐちゃの赤い何かは人の形をしているようにも見える。
いや、まさか。
違う。あれじゃない。
「僕の質問に答えろよ。おい、殺すぞ?」
「あしっど」
「この国の人間が、赤い訳ないもんなぁ……」
そうだ。あれなはずがない。
「はぁ? 何言ってんのお前、いいから僕が聞いたことに答えろよ」
若い男はナイフの先をこちらに向けている。あれに刺されたら、痛いだろうな。
家族は欲しいけど、あのナイフは怖いから聞かれたことに答えた方がいいかもしれない。
「頼まれたのとは違うなぁ……、貰ったんだ。俺の家族はどこにやった?」
「ふーん、お前にはそう言ってるんだ」
「家族はどこだ?」
「ここにいるよ。二人、もうミンチだけどね」
若い男はソファーから立ち上がり、わざとらしく赤い何かを踏みつけた。
元からぐちゃぐちゃだったのがさらにぐちゃぐちゃになっていく。
赤い何かってなんだ?
「それじゃない。お父さんとお母さんと、それから子供が一人、いただろ? お前じゃない」
「だからさぁ、これだって言ってるだろ?」
何度も何度も踏みつけられて、赤い何かの形がどんどん崩れてしまう。
「我慢できなくてさ……、二人殺しちゃったんだよねぇ。お父さんと子供、いやー、最高だったよ、叫び声も出血もさ」
「何言ってるんだ? 家族はどこにいったか聞いてるんだ」
そんな訳がない。
幸せそうじゃないからあれは違うんだ。
「お前こそ何言ってんの? これだって、言ってるだろ。訳分からんこと言うなよ」
「あしっど。逃ゲマショウ」
「違う。駄目だ。それじゃない……」
31人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
慈雨 - この壊れっぷりがたまらないです!本当に大好きです!頑張って下さい! (2018年8月1日 21時) (レス) id: 15d4cc16a2 (このIDを非表示/違反報告)
ネギトロ@38(プロフ) - コメント失礼します。とても引き込まれ、次へ次へと読み進めてしまいました。更新、頑張ってください (2018年6月3日 9時) (レス) id: 367ddc4bce (このIDを非表示/違反報告)
柳(プロフ) - ピペットくんのぶっ飛び具合、たまりませんヾ(´∇`)ノ それに、駒込ピペットから名付けるなんて羨ましいほどのセンスの高さ!素敵です!これからの展開も、楽しみしています! (2018年5月25日 3時) (レス) id: 4785678acf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:衛生兵079 | 作成日時:2018年5月13日 20時