動かない理由 ページ28
着替え終わって、戻ってくるとムーンは表情一つ変えていなかったが、クラウディはかなり微妙な顔をしていた。
「戻ったぞ」
「ガキっぽい服しかないのか、お前」
「何だっていいだろ、簡単に着れればそれでいいんだ」
さっきと同じ席に座り、箱から果物がたくさん乗ったタルトを取り出して自分の前に置いた。
「なぁ」
「何だよ。やらねぇぞ」
「いや、それはもう諦めた。こいつお前がいなくなってから1ミリも動かなくて不気味なんだけど……」
確かにさっきから喋らないし、動かない。ケーキにも手を付けた跡もない。
「ムーン?」
「ハイ、何デショウ」
声をかけると、ちゃんと反応してこちらを見たので壊れてはいないようだ。
「もしかして俺が嫌われてたパターンか? だからいくら声かけても無反応だったわけ?」
「だとしたら珍しいな、お前が嫌われてるなんてなぁ」
「さっき振られたって言って馬鹿にしたの覚えてる?」
「さぁ? どうだか」
「えー、ムーンちゃん。俺のこと嫌い?」
「クラウディ、気色悪いぞ」
「嫌イトイウヨリ苦手デス。ソレニソンナ下ラナイコトデ動カナカッタ訳デハアリマセン」
「じゃあ何してたんだ? メールの返信? 電話?」
「そりゃお前だろ。女の子からの連絡で携帯鳴りっぱなしだ。今日は忘れてきたのか?」
「今日はマナーモードなの! お前と違って俺モテるからねぇ、もう12件もメッセージ来ちゃってるよ」
クラウディが懐から携帯を取り出し、こちらに向ける。
画面にはそれぞれ12人の女性からのデートやらなんやらの誘いのメッセージが表示されていた。
「浮気者め。一人に絞れ、今に痛い目見るぞ」
「いいだろ別に、みんな平等に愛しているんだからさ。そういう関係を持ったことがないレインには分かんないだろ」
「こいつ……」
「アノ……」
「何だ。あぁ、そうだ。何で動かなかったか、だったな」
「……先程ハ、彼ノコトヲ調ベルノニ集中シテイタノデ」
「嘘だろ……。個人情報丸出し?」
「ソウイウコトニナリマスネ」
「何でこいつ調べたんだ? 機能の無駄遣いだろ、こいつそのものが歩く個人情報みたいなもんだし」
「お前そんなこと言っていいのか? 警察特権使うぞ」
「えとわーる・くらうでぃ。生年月日ハ1992年2月14日。警察署長ヲ務メルそら・くらうでぃト広告代理店社長ノあいな・くらうでぃノ間ニ生マレタ一人息子デ、ソレカラ……」
「おい、馬鹿! もうやめてくれよ」
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慈雨 - この壊れっぷりがたまらないです!本当に大好きです!頑張って下さい! (2018年8月1日 21時) (レス) id: 15d4cc16a2 (このIDを非表示/違反報告)
ネギトロ@38(プロフ) - コメント失礼します。とても引き込まれ、次へ次へと読み進めてしまいました。更新、頑張ってください (2018年6月3日 9時) (レス) id: 367ddc4bce (このIDを非表示/違反報告)
柳(プロフ) - ピペットくんのぶっ飛び具合、たまりませんヾ(´∇`)ノ それに、駒込ピペットから名付けるなんて羨ましいほどのセンスの高さ!素敵です!これからの展開も、楽しみしています! (2018年5月25日 3時) (レス) id: 4785678acf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:衛生兵079 | 作成日時:2018年5月13日 20時