空っぽ家族 ページ11
動かなくなった父親を、元の椅子に座らせる。
ちゃんと顔も直してやる。スーパーマーケットで見た優しそうな顔だ。
「これでいいか。後は、マーズちゃんかなぁ……」
家に居るはずの娘を探すことにしたが、思っていたよりすぐ娘は見つかった。
「マーズ」と書かれたプレートがかかった部屋で、たくさんの縫いぐるみに囲まれて娘は眠っていた。
「可愛い……」
きっと遊び疲れて眠っているのだろう。柔らかそうな髪が寝息に合わせて揺れていた。
ふっくらとした頬をつつく。弾力があってすべすべしている。
「んん……」
「うおっ……。ああ…………」
起こしてしまったかと少し焦るが、すぐに寝息を立て始めたので安心した。
元気に遊び回るのもいいが、こうして大人しく眠っているのもこれはこれでいい。
今すぐ欲しい。
細くて柔らかい首に手をかけた。
そしてその手にぐっと力をこめる。
「ぐぇ、ぐぐぐ。あっ、ああっ」
閉じていた目を見開き、バタバタと手足を動かして抵抗しているようだが、所詮は子供の力なので、何も問題はない。
「大人しくしててくれ。すぐまたゆっくり眠れるからな」
娘の顔は気味の悪い紫色になっている。酷い色だ。
多分１０分ぐらいはやっていたと思う。
気が付けば娘はぐったりして、動かなくなっていた。すっかり血の気を失った顔はどこか不気味だった。
「あぁ、これで全部俺のもんだ。さ、お母さんとお父さんのとこに行こうな」
動かない娘を抱えて、リビングへと向かう。
父親と母親が静かに座っていた。
「どこに座ってたか聞くの忘れたなぁ……」
とりあえずさっき自分が座っていたところに、娘を座らせた。
子供は母親の隣がいい、そこが一番安心できる場所だからだ。本当は自分がそこに居たいのだが、彼女の本当の子供にその場所を譲ってやる。
自分は空いた席に腰をおろした。
「幸せだなぁ……」
全部自分の物になった。
でも、空っぽだ。
だが、幸せだ。これ以上ないと言うくらいに心地いい。
「お母さん。今日の夕飯は？」
「……」
「お父さん。明日も遊ぼうね！」
「……」
「マーズ。今日は一緒に寝ようか」
「……」
誰も何も答えてくれなかった。
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慈雨 - この壊れっぷりがたまらないです！本当に大好きです！頑張って下さい！ (2018年8月1日 21時) (
レス) id: 15d4cc16a2 (このIDを非表示/違反報告)
ネギトロ@38(プロフ) - コメント失礼します。とても引き込まれ、次へ次へと読み進めてしまいました。更新、頑張ってください (2018年6月3日 9時) (レス) id: 367ddc4bce (このIDを非表示/違反報告)
柳(プロフ) - ピペットくんのぶっ飛び具合、たまりませんヾ(´∇｀)ﾉ それに、駒込ピペットから名付けるなんて羨ましいほどのセンスの高さ！素敵です！これからの展開も、楽しみしています！ (2018年5月25日 3時) (レス) id: 4785678acf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：衛生兵079 | 作成日時：2018年5月13日 20時
