お話聞かせて ページ10
「仕事は何してるんだ?」
「……」
「どっかで見たことある顔してんだけどなぁ。あんたテレビとか出てたりしないか?」
「…………」
「じゃあ、名前を教えてくれよ」
「お前に、教える義理はない……」
「何でだぁ? それなら、うーん。あ、今の嫁さんと出会ったきっかけは?」
隣に座っている母親の髪を撫でると、微かに金木犀の香りがした。
「俺はこの香りはあまり好きじゃないな」
「ローズに触るな! この犯罪者め!!」
急に父親が声を荒げた。
突然のことで驚いて固まっていると、父親が椅子から立ち上がり、身を乗り出して掴みかかってきた。
「絶対に、絶対に許さないからな! 殺してやる!」
「何怒ってんだよ 落ち着けって。な、ほら、椅子に……」
「黙れ!!」
「なぁ……」
さっきスーパーマーケットで見た優しそうな様子からは信じられないほどの豹変ぶり。こんなにも人は変わるものなのかと少し感心してしまった。
ただ今は感心している場合ではない。
これを何とかしなくては。このまま騒がれたら、まだ家に居るだろう娘が来てしまう。出来れば一人ずつがいい。
「落ち着けよ」
首のあたりを掴んでいる手を無理矢理引き剥がす。そこまで力は強くなかった、きっと弱っているのだろう。
「くそっ。こいつ!」
また伸ばされた手をかわし、自分も椅子から立って距離をとる。
そして、少しふらついた足取りでこちらに向かってくる父親を殴り倒した。
「うぅ……」
今度はしっかり動かないようにしなくては。母親と同じように倒れた父親の首を踏みつけた。
「ぐぇ」
ここからはさっきと同じだ。動かなくなるまで踏めばいい。でも出来るだけ綺麗に残るように、踏みすぎないようにする。
動かなくなった。もういいだろうか。
そっと倒れた父親の顔を覗き込む。
「あ……、あ」
声が漏れた。まだ動ける。
しっかり踏まなければ。もう一回。
ぐちゃりと音がして、父親は動かなくなった。
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慈雨 - この壊れっぷりがたまらないです!本当に大好きです!頑張って下さい! (2018年8月1日 21時) (レス) id: 15d4cc16a2 (このIDを非表示/違反報告)
ネギトロ@38(プロフ) - コメント失礼します。とても引き込まれ、次へ次へと読み進めてしまいました。更新、頑張ってください (2018年6月3日 9時) (レス) id: 367ddc4bce (このIDを非表示/違反報告)
柳(プロフ) - ピペットくんのぶっ飛び具合、たまりませんヾ(´∇`)ノ それに、駒込ピペットから名付けるなんて羨ましいほどのセンスの高さ!素敵です!これからの展開も、楽しみしています! (2018年5月25日 3時) (レス) id: 4785678acf (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:衛生兵079 | 作成日時:2018年5月13日 20時