検索窓
今日:1 hit、昨日:6 hit、合計:35,045 hit

ぎこぎこ ページ19

「まぁ、いいや。残ったのは無理矢理入れよう。おい、お前」

「私ノコトハ、オ前デハナクむーんトオ呼ビクダサイ」

「分かった。ムーン、来てくれ」

 そう言って歩き出すとムーンは黙って後をついてきた。

 リビングに戻り、自分が床に置いたままだったリュックをムーンに手渡す。

「それ、気ぃ付けて持ってろよ。色々危ないから」

「分カリマシタ。確カニコレハ危険ナモノガ入ッテイルヨウデスネ」

「そういうこと。ほら、風呂場に戻るぞ」

 自分は一人残った母親の腕を掴んで、風呂場までまた引っ張っていく。

「さて、どうしよっかなぁ……」

 運んできたは良いものの、やはりこの浴槽には全員収まりそうにない。

「なぁ、ムーン」

「ハイ。何デショウ」

「その中にさぁ、ノコギリ入ってるよな?」

「のこぎり?」

「うん。俺に寄越せ」

 そう言うと、ムーンはリュックをごそごそと探り始めた。

「ア、アリマシタ。ドウゾ」

「おぉ。サンキュー。これで入れられるな」

 渡されたノコギリは普通のものと比べて少し小さいものだが、これでも十分に使えるものだ。

 そのノコギリを使って、一旦浴槽から引き上げた父親の右腕を切り落とし始める。

 娘は体が小さいからいいとして、父親と母親の四肢を切ってやれば、この狭い浴槽でも十分なはずだ。

「あぁ、失敗した」

 右腕を3分の2程切り進めたところで気がつく。

「ドウシタノデスカ?」

「このままやったら服が汚れる。忘れてた、あ、でも、あー、何でもない、後でどうにかする」

「ソウデスカ」

「あ、切れたぞ」

 切り落とした右腕を拾い上げ、その断面をムーンに見せる。

「赤だ」

「デモ、コノ赤ハ貴方ノ目ヨリ黒ッポイデスネ。何故?」

「青や緑、黄色だってたくさん種類があるだろ?」

 今度は左腕の切断に取りかかる。

「赤だって濃かったり薄かったり、白っぽかったり黒っぽかったり色々あるんだ。でも皆全部の赤が嫌いだから、医者は怪我人を進んで診ようとしないんだ」

「ソウデスカ」

「そういやお前、質問の数が減ったな」

「帰リナガラ話スト、貴方ガ言ッタノデ。後デタクサン質問シマスヨ」

「ふーん。そうか」

 そこからは何も会話はなかった。

 ただ淡々と自分が四肢を切り落としていくのを、ムーンは黙って見ていた。

着替えたい→←もういらない



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (47 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
31人がお気に入り
設定タグ:オリジナル , 殺人鬼 , 小説 , オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

慈雨 - この壊れっぷりがたまらないです!本当に大好きです!頑張って下さい! (2018年8月1日 21時) (レス) id: 15d4cc16a2 (このIDを非表示/違反報告)
ネギトロ@38(プロフ) - コメント失礼します。とても引き込まれ、次へ次へと読み進めてしまいました。更新、頑張ってください (2018年6月3日 9時) (レス) id: 367ddc4bce (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ピペットくんのぶっ飛び具合、たまりませんヾ(´∇`)ノ それに、駒込ピペットから名付けるなんて羨ましいほどのセンスの高さ!素敵です!これからの展開も、楽しみしています! (2018年5月25日 3時) (レス) id: 4785678acf (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:衛生兵079 | 作成日時:2018年5月13日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。