案内役 ページ1
……ちっ。
はぁー。また迷子かよ。
……やぁ、お嬢さん。
こんな夜遅くに、たった一人で泣きベソかいてウロウロと、どうしたのかな？
ほう。やっぱり、じゃなかった、うっかり道を間違えて迷ってしまったのか。
まぁこの辺は道が入り組んでいて非常に複雑だからねぇ、大人でも迷うようなところを子供一人でなんて難しいお話だ。
しかし……お母さんかお父さん、学校でもここへは一人で来るなと教わるはずではないかね？
一体全体何が目的で、ここまで一人で来たのかな？
うん、……母親、病気、薬草。なるほどね。
はぁ、またこの手の奴か。最近こんなんばっかだ……あー、いや、何でもない。何でもないよ。
し、しかしお嬢さんは運がいい、なんてったってこの私に出会えたのだから。
私はこのあたりをよぉーく知っていてね、一度だって迷ったこたぁないんだ。
だからこの私が、わざわざ時間を割いて君をぱぱっとお家まで送り届けてあげよう！
君のような子供を放っておいて、なにか事故に巻き込まれたり、不審者にあんなことやこんなことをされたり、なんだりかんだりで死んでしまったら私も寝覚めが悪い。
お嬢さん。君を助けるのは私自身の精神的健康と快眠のためでもあるんだ。
決して私が子供好きとか、お人好しとか、そういった類いのものではないと覚えておくように。
では早速案内するわけだが、君に守ってほしいことが3つある。
1つ。私には決して触れないこと。最低でも3歩以上距離を取るように。
2つ。私に決して話しかけないこと。話しかけて良いのは私の言ったことに対する返答、あとトイレの時と命の危機の時だけ。
3つ。私の言うことは絶対に聞くこと。何があっても、家に帰り着くまでは私の言うことだけに従うように。
……理解したかね。
では早速行こうか。いいか、ちゃんとついてくるんだよ。
私はちょっとばかり歩くのが早いからね、べそべそして前が見えないとすぐはぐれてしまうから、ちゃんと涙を拭って前を見るんだ。
本当に分かったか？ 返事は？
……よろしい。元気がいいのは嫌いじゃない。
では行こう。
………………来てるか？
…………ついてきてるか？
……ちゃんといるな？
いるよな？
ちゃんと来てるか？
ついてきてるか？
まだいるよな？
ちゃんとついてくるんだぞ。
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作者名：衛生兵079 | 作成日時：2024年1月22日 1時
