駅のコインロッカー ページ10
物を紹介する前に一つ、お話をしましょう。
これは、ある女子高生のお話です。
彼女は当時、年上の男性と親密な、夜を共にするような仲でした。
ある時彼女は望まない妊娠をしてしまいました。
男性は逃げ、誰にも相談することもできずに自分の部屋で赤ちゃんを産み落としました。
しかし、彼女はまだ学生。赤ちゃんの世話をすることはできません。
そこで彼女は駅のコインロッカーに赤ちゃんを捨ててしまったのです。
それから数年が経ち、彼女は立派な社会人になり順調で充実した日々を送っていました。
そんなある日、仕事でどうしてもあの赤ちゃんを捨てた駅を利用しなければならなくなったのです。
嫌々ながらその駅を訪れると、あのコインロッカーの前で5歳ほどの子供が泣いているではありませんか。
彼女はその子供を放っておくことが出来ずに声をかけました。
「どうしたの？ 大丈夫？」
しかし子供は泣いたまま答えません。
「お母さんは？」
そう聞くと子供は泣き止み彼女を指差して。
「お前だ！」
……驚きましたか？
誰でも一度は聞いたことのある有名な都市伝説です。
所詮都市伝説、そう思わないでください。
火のないところに煙は立ちません。
そう、こちらのコインロッカーはある駅で実際に使われ、事件の現場になってしまったものです。
廃棄されるはずだったところを私が引き取り、ここへ置きました。
102という数字の書かれたロッカーを見てください。
何か黒い液体が垂れたような跡が残っているでしょう。これは、元々ここに入れられていたものが腐って体液が流れ出て、染み付いてしまったものなのです。
このロッカーにとある女性が、生まれたばかりの自らの子供を閉じ込め、その命を奪いました。
その当時、望まない子供を作ってしまう若者が非常に多く、似たような事件が頻発していました。
女性もその一人だったのです。
ですがそんなことを考えた人間が、大勢いたということが恐ろしいと思いませんか？
都市伝説のように赤ちゃんが大きくなった姿でお前だと叫ぶよりも、私は幸せに生きている母親のほうが恐ろしいと思うのです。
しかしその恐ろしい生き物が、歪んだ過去をそのものに与えるのです。
それが私は愛おしい。手元に置きたいと思ってしまう。
……でもこんなことは、繰り返してはいけない。
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くろねこらいふ(プロフ) - 選ぶとしたら、豪華客船の遺物と駅のコインロッカー、忘れ物の雨傘が好きです。特に忘れ物の雨傘は、めちゃくちゃ好きです。アガパンサスの花言葉を調べて、さらに好きになりました。店主の喋り方もすごく好きです。これからも衛生兵さんの小説楽しみにしています！ (7月16日 23時) (
レス) id: 0083a1a0dd (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - この作品とっても面白いです！一気に読んでしまいました…と言いたいところですが、深夜なので怖くて恐る恐る読んでいます😂どうしてこんなに恐怖心を掻き立てられる文章がかけるのか…本当に尊敬します。語り手の口調も好きです。これからも頑張ってください！ (7月8日 2時) (レス) @page7 id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：衛生兵079 | 作成日時：2023年7月8日 1時
