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廃墟の黒電話 ページ8

こちらの黒電話は山奥の旅館だった廃墟にあったものです。

 なんでもこの黒電話、電気は通っておらず電話線もどこにも繋がっていないというのに夜中になると呼び出し音が鳴り響くそうです。

 受話器を取ると電話の向こうから声が聞こえるのです。

「こちら……、遭難……、怪我人あり……、誰か」

 か細い声は強く吹き付ける風の音でかき消されハッキリとは聞こえないのですが、そう言っているように聞こえるらしいのです。

 ですがこの近辺で事故や事件は一切起こっておらず、過去に遭難事故があったという記録もありませんでした。

 ある時、肝試しでやってきた若者がこの黒電話を持ち帰ったそうです。

 肝試しから戻り一人の若者の家に集まって皆で酒盛りをしていると、部屋の隅においた黒電話が鳴り始めたのです。

 もちろん電気も電話線も繋いではおりません。

 皆恐怖で動けないでいる中、一人の勇敢な若者が受話器を取りました。

「誰だ!」

 若者は受話器の向こうへと怒鳴りました。

 受話器の向こうからはごうごうと激しい風の音がするばかりで、誰も答えません。

 しかしその若者は電話を切ることなく、じっと受話器から聞こえる音に耳を澄ませていました。

 他の若者ははじめこそ恐怖で動けずにいましたが段々と緊張がほぐれ、若者の近くまで行き一緒になって音に耳を澄ませていました。

 すると突然風の音が途切れ、大きくはっきりと怯えた声が受話器から響きました。

「助けてくれ! 俺たちはここにいる! タンガク山にいる! お願いだから早く助けに来てくれ! あ、あ、奴が来る!」

 言い終わるか否かというタイミングで電話はブツリと音を立てて切れてしまい、それ以降電話がかかってくることはなかったそうです。

 その後若者達は「タンガク山」について調べたそうですが、それらしき山も地名も見つかることはありませんでした。

 そして黒電話をどうしようかと話し合い、元の場所に戻しに行こうとしましたが誰も行きたがらず、その後は様々な人物を介して私の所へと持ち込まれました。

 電話の向こうの人物がどこから電話をかけていたのか、最後に言っていた奴とは何だったのでしょう。

 しかし電話の人物の様子から、それはとても恐ろしいものに違いないでしょうね。

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くろねこらいふ(プロフ) - 選ぶとしたら、豪華客船の遺物と駅のコインロッカー、忘れ物の雨傘が好きです。特に忘れ物の雨傘は、めちゃくちゃ好きです。アガパンサスの花言葉を調べて、さらに好きになりました。店主の喋り方もすごく好きです。これからも衛生兵さんの小説楽しみにしています! (7月16日 23時) (レス) id: 0083a1a0dd (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - この作品とっても面白いです!一気に読んでしまいました…と言いたいところですが、深夜なので怖くて恐る恐る読んでいます😂どうしてこんなに恐怖心を掻き立てられる文章がかけるのか…本当に尊敬します。語り手の口調も好きです。これからも頑張ってください! (7月8日 2時) (レス) @page7 id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:衛生兵079 | 作成日時:2023年7月8日 1時

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