曰く付きとある収集癖

豪華客船の遺物 ページ6

こちらのタンブラーと十字架はかの有名な豪華客船タイタニック号から引き上げられたものです。

　タンブラーは氷山にぶつかり沈みゆく船から生還した方のもので、十字架は船と運命を共にし亡くなった方のものです。

　ところで、類は友を呼ぶ、という言葉を知っていますか？

　似通った者同士が自然に集まり仲間を作る。という意味の言葉です。

　似たもの、近いものがいつの間にか1つのところへ集まる。私の店もそうかもしれませんね。

　こうして仲間を呼ぶように生は生を呼び、死は死を呼ぶのです。

　この2つのものを使いある実験をした兄弟がおりました。

　兄がタンブラーを、弟が十字架を隠し持ち、病院の入院患者たちに聞いて回りました。

「あなたは、一緒に出かけるとしたら私達のどちらを選びますか？」

　そう聞いてまわり、兄を選んだ入院患者は皆快方へと向かい元気になり退院していきましたが、弟の方を選んだ患者は皆、病状が悪化し亡くなってしまいました。

　この結果を見た兄弟はもう一つ実験をしました。

　今度はタンブラーを今にも死にそうな老人に、十字架を生まれたばかりの赤ん坊に持たせたのです。

　するとどうでしょう、老人はみるみるうちに元気を取り戻し自力で他の助けを借りずスタスタと歩けるまでになり、反対に赤ん坊は激しく衰弱し医師の手当も虚しくその命を落としてしまいました。

　かくして兄弟の実験は大成功をおさめました。

　兄弟が思ったとおり、生者の持ち物は生を呼び、死者の持ち物は死を呼んだのです。

　実験を終えた兄弟はタンブラーと十字架をどこかで噂を聞きつけたのかここへと売りにやって来ました。

　これらがタイタニック号から引き上げられたものであるということ、兄弟の実験の話を聞いて、そこそこの額で買い取らせていただきました。

　そして他のタイタニック号の遺物と共に保管しています。

　それから兄弟はどうなったか？ それは分かりません。

　今も生きているかもしれませんし、死んでいるかもしれません。

　兄は生きていて、弟は死んでいるかもしれませんね。

　あぁ、そうだ。一つ聞かせてください。

　あなたはこちらのバイオリンとお酒の空瓶、どちらに惹かれますか？

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