少年の絵日記 ページ5
こちらの日記帳は現代でも難病と言われる治療法の見つかっていない病気を患っていた少年の持ち物でした。
少年は病室のベッドの上から動けず沢山の機械に繋がれていましたが、絵日記だけは毎日欠かさずつけていました。
その内容はほとんど同じで、絵も窓から見える木の枝をクレヨンで描いたものばかりでしたがある時から急に変化し始めたのです。
ほら、このページをご覧ください。
目が痛くなるような毒々しい色使いでどこかの街の風景らしき絵です。
文章は子供の拙い文字で少々読みづらいのですが、こう書かれております。
「きょうはまちへでかけた。おじさんがつれていってくれた。あしたはうみへいくらしい。」
もちろん少年はその日1日ベッドで寝ていましたし、病状も悪化してきていたため外出など出来るはずもありませんでした。
そして次の日、同じように毒々しい色使いの水中と思しき絵と、妙な文章が書かれています。
「おじさんとうみにいった。はじめてのうみはたのしかった。私は彼が欲しい。あしたはやまへいくらしい。」
一部だけがどう見てもその少年のものとは思えない筆跡で書かれているのでしょう。まるで大人が走り書きしたような文字ですが少年の両親や医者が書いたものではありません。
次の日はやはり山の絵が、そしてこの文章が書かれていました。
「決めた。きょうは。連れていく。連れていく。おじさんと。連れていく。可愛い子。おいで。一緒にゆこう。やまに。いこう。いった。あしたは。一緒に。へいくらしい。早く。早く。いこう。連れていく。この子は私のもの。」
明らかに少年のものではない筆跡がほとんどを占めています。
そしてその次の日、少年の容態は急変し亡くなってしまいました。
さらに次の日、少年の母親が病室を整理している途中にこの絵日記を見つけ開いてみると、最後に書かれたページの次にある文章が書かれていました。
「あなたの子。ワタシは行く。山のような人の波にさらわれて。ゆく。いく。さようなら。愛しい人へ。さようなら。花を一つ。此岸にください。本当にさようなら。」
それは少年でも誰のものでもない筆跡でした。
少年は何を見ていたのでしょうか？
最後の文章の意味は？
今となってはそれを知るすべはありません。
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くろねこらいふ(プロフ) - 選ぶとしたら、豪華客船の遺物と駅のコインロッカー、忘れ物の雨傘が好きです。特に忘れ物の雨傘は、めちゃくちゃ好きです。アガパンサスの花言葉を調べて、さらに好きになりました。店主の喋り方もすごく好きです。これからも衛生兵さんの小説楽しみにしています！ (7月16日 23時) (
レス) id: 0083a1a0dd (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - この作品とっても面白いです！一気に読んでしまいました…と言いたいところですが、深夜なので怖くて恐る恐る読んでいます😂どうしてこんなに恐怖心を掻き立てられる文章がかけるのか…本当に尊敬します。語り手の口調も好きです。これからも頑張ってください！ (7月8日 2時) (レス) @page7 id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：衛生兵079 | 作成日時：2023年7月8日 1時
