古民家のすりガラス ページ15
こちらの木枠に入った模様入りすりガラスは、山間の村に建てられた古民家に使われていたものです。
老朽化のためすでに古民家は解体されてしまいましたが、その際に私が直接出向いてこのすりガラスを、まぁ、7桁程の額で買い取らせていただきました。
現在の住宅ではほとんど見かけませんが、昔は多くの住宅に使われていたものなので、すりガラスとしてみたら正直そこまで価値のあるものではありません。
ですが私がこうして所有しているということは、もうお分かりでしょう？
最初にそれを見たのはその家に住み込みで働くお手伝いさんでした。
当時このすりガラスは台所と居間を仕切る引き戸の一部に使われておりました。
お手伝いさんが台所で料理をしていると、ふと、誰かの気配を感じます。
気配のする方へと視線を向けると、すっかり締めた引き戸の向こう。つまり居間の方に誰かが立っていました。
すりガラスですからはっきりとは分かりませんが、丁度小学生くらいの男の子のようだったそうです。
人影はしばらくするとふっと消えてしまい、その時はその家の子供だろうと深く考えませんでした。
そして次の日、村に住む小学生の男の子が川で溺れて亡くなりました。遊んでいる最中に足を滑らせてしまったそうです。
しかしお手伝いさんにはほとんど関係ないことでしたので、その日は居間で仕事をしているとまた気配を感じます。
見るとまた引き戸の向こう。今度は台所の方に老人のような姿ありました。
そして昨日と同じようにその姿は消えてしまいその次の日、村の寝たきりだった老人が亡くなりました。
驚くことにすりガラスの向こうにいた姿と、亡くなった老人の姿はそっくりでした。
それからです。このすりガラスの向こうに明日亡くなる方が立つようになったのです。
そして大雨が続いていたある日、その家の主人はとんでもないものを見てしまいました。
引き戸の向こう、台所を埋め尽くす程の人の姿を。他の人に押されすりガラスにぴったりはりつき、表情や着物の柄が見えるほどぎゅうぎゅうに人がいたのです。
主人は慌てて村中にそのことを伝えましたが信じるものはおらず、翌日その家と周囲の数軒の家を残して土砂崩れに巻き込まれ大勢の死者が出ました。
それがきっかけで一家は引っ越し、取り壊しまで長い間放置されることになりました。
こうして取り外された今でも、人影のようなものが見えることがあるんですよ。
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くろねこらいふ(プロフ) - 選ぶとしたら、豪華客船の遺物と駅のコインロッカー、忘れ物の雨傘が好きです。特に忘れ物の雨傘は、めちゃくちゃ好きです。アガパンサスの花言葉を調べて、さらに好きになりました。店主の喋り方もすごく好きです。これからも衛生兵さんの小説楽しみにしています！ (7月16日 23時) (
レス) id: 0083a1a0dd (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - この作品とっても面白いです！一気に読んでしまいました…と言いたいところですが、深夜なので怖くて恐る恐る読んでいます😂どうしてこんなに恐怖心を掻き立てられる文章がかけるのか…本当に尊敬します。語り手の口調も好きです。これからも頑張ってください！ (7月8日 2時) (レス) @page7 id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：衛生兵079 | 作成日時：2023年7月8日 1時
