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おや、どうされました?
珍しいこともあるものですねぇ、打ち捨てられた田舎の町の、細い路地裏にあるこの店にお客が来るだなんて。
何です? お客じゃない?
はぐれた?
学校の友人と?
なるほど、いわゆる肝試しと言うやつですか。このあたりは夏になるとよくそういう目的で来るあなたのような若い人たちが多いんですよ。
ですが道に迷ってここへたどり着くのは、本当に珍しい。
……あぁ、雨が降り出してしまいましたね。この様子ではしばらく止みそうにない。
雨が止むまではここにいるといいでしょう。扇風機の風が当たる、そこの椅子に座ってゆっくりしていってください。
え? ここはなんのお店か、ですか?
ここは私が趣味で集めたものを売っているお店です。お店、と言っても最近は誰も買いに来る人がいませんので、私のコレクションの展示場と言ったほうが正しいかもしれませんがね。
商品?
例えば、今あなたが座っている椅子。それも商品の一つです。そちらはかの有名なアドルフ・ヒトラーが使用していたと言われる椅子でございます。
あの残酷な独裁者がその椅子に座り何を思い、何をしていたのでしょう。考えただけでゾクゾクしませんか?
おや、座ってゆっくりしても良いんですよ?
……それからこちらの大きな鏡はある小学校の踊り場に設置されていたものです。
夜中の二時に学校に忍び込み、この鏡を覗くと別の世界へと連れて行かれてしまう。そんな噂があったそうです。
えぇ、そうです。ここには普通のものは何一つございません。
ここにあるもの全てに何かしらの「いわく」があるのです。
私はそういった品を集めるのが趣味なのです。
全てのものに存在する理由が、歴史があるのです。それが歪んでいればいるほど、私はそれが愛おしくて仕方がない。
誰かがそれを手に取り、新しくそれに理由を、歴史を与えるかもしれない。私はそれを見届けたい。だから私はここに店を開いたのです。
そしてずっと待っているのです、それに呼ばれる人を。
ここにあるものは人を呼ぶのですよ、そうして呼ばれた人がここへたどり着くのです。
そうだ、雨が止むまで退屈でしょう。
退屈しのぎに私のコレクションを紹介させてくださいな。
もしかしたら、あなたを呼んだものが見つかるかもしれません。
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くろねこらいふ(プロフ) - 選ぶとしたら、豪華客船の遺物と駅のコインロッカー、忘れ物の雨傘が好きです。特に忘れ物の雨傘は、めちゃくちゃ好きです。アガパンサスの花言葉を調べて、さらに好きになりました。店主の喋り方もすごく好きです。これからも衛生兵さんの小説楽しみにしています! (7月16日 23時) (レス) id: 0083a1a0dd (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - この作品とっても面白いです!一気に読んでしまいました…と言いたいところですが、深夜なので怖くて恐る恐る読んでいます😂どうしてこんなに恐怖心を掻き立てられる文章がかけるのか…本当に尊敬します。語り手の口調も好きです。これからも頑張ってください! (7月8日 2時) (レス) @page7 id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:衛生兵079 | 作成日時:2023年7月8日 1時