ヒトゴロシは語る

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嫌な気持ちにはなったけど、そんな状態のメアリを他のやつに任せたり、放って帰るわけにいかないだろ？

　もう立っているのもやっとみたいな状態だったからさ、おぶって家まで送っていってやることにしたんだ。

　それに家の方角は一緒だったから丁度良かった。

　それで、メアリが住んでるアパートについて、すごく悪い気持ちになったけど寝息立て始めたメアリのポケットまさぐって鍵出して開けて、それで、泥棒みたいにこそこそ慎重に部屋のベッドまで連れて行ったんだ。

　おかしいだろ？ 背中に家主背負ってるのにばれないようにしなくちゃとか、音を立てないよう、証拠を残さないよう、なんて、考えてさ。

　目が覚めた時には、自力で帰ってきて寝てしまったんだ。そう思うようにしなくちゃ、って感じで。

　ドアを開けたときびっくりしたんだけど、家の中はゴミだらけで、汚かったよ。

　流し台には食器とかが溜まってるし、ゴミ箱は溢れて、服も脱ぎっぱなしで散らかってて。

　意外な一面、っていうのかな？

　なんかイメージと違ったっていうかさ。

　……いや、勝手にイメージ持って期待してた俺が悪いよ。メアリは悪くない。

　床に落ちているものを踏まないように避けながら、何とかベッドまで辿り着いて、そっとメアリを寝かせたときあるものが目に入ったんだ。

　それは、頭痛薬だった。

　へへ、へ。

　刑事さん、あんたなら分かるだろう？

　お酒と、頭痛薬、……いい組み合わせだよな。

　その時、落ち着いていたあの衝動が、帰ってきたんだよ。

　4年前に売女を殺したあれが。

　俺は運が良い方なんだ。丁度良くメアリは頭が痛いって、そう言って目を覚ましたんだ。

　だから俺、迷わず渡したよ。

　俺の手で死ぬ手前のラインまで押したんだ。

　最後にそのラインを超えたのはメアリだった。メアリはなんの迷いもなく飲んだよ。

　べろべろに酔っていたから、お酒を飲んだから多めに飲んだほうがいいよ、って俺の言葉を鵜呑みにしてさ。

　そこからは、ただずっと見ていたよ。

　意識がなくなって、呼吸が弱くなっていって、最終的には止まってしまうまでじっと。

　俺が薬を手渡さなければ、多めに飲めと言わなければ、死ななかったのになぁ。

　結局、俺はメアリを送って、薬を手渡してすぐに帰ったってことにした。

　薬を飲んだのはメアリの意思だったし、酔っていた故の事故ってことになったよ。

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