病気とは言わないで

臆病な彼女　５ ページ38

『何を言ってるんだお前は』

「ボクが食べようとしたから守ってるんでしょ？ もうキミは食べないから大丈夫！」

『信じられるか。そう言って油断させて……』

「本当に……？」

『あ、おい！』

「本当！ 仲良くしよう！」

　その瞬間、水色の化け物の手が緩んでアリスさんは床に尻餅をついた。

「もう、痛いじゃない！ ちゃんと殺してよね！」

『何だと？ お前も何を言っているんだ？』

　水色の化け物は困惑しているようだった。

　それもそうだろう。普通の人だったら、ちゃんと殺せなんて言わない。

　ふと、水色の化け物と目が合った。

『お前も何か言うのか？』

「え？ あ、その、私は……」

「もうやめてよ。エイト」

　ぼそっとイートが言った。

『何だと？』

「もう私のことを食べようとしないって言ってくれたし、やっとお友達も出来たし……。誰にも傷ついて欲しくないよ……」

『だが……』

「貴方がそうやって周りを排除しようとするのもいけないんじゃないの？ そんなことしてたらその子孤立して一人になっちゃうじゃない」

『その方が、誰にも裏切られることはないし安全だ』

「一人は寂しいよ。ねぇユカ」

　ジャックがこっちを見て笑う。

「あ……、うん」

　確かに一人は寂しい。誰か側に居て欲しいものだ。実際私がそうだったから、よく分かる気がする。

『…………。今日はこのへんにしておく。次こいつに何かしたらそのときは……』

　しばらく考えてからそう言うと、水色の化け物は元の髪の毛に戻ってしまった。

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