病気とは言わないで

おなかすいた ページ17

「ユカ。私はアリスと二人で話したいことがあるので、席をはずしてもらえますか？」

　優しい声でロウさんは言ったが、どこか怒りが混じっていたようにも見えた。

「そうね、ユカ。病室に戻った方がいいわ。ロウって怒るとちょっと怖いのよね」

「別に怒っていない。昨日の話の続きをしようと思ってね」

「私は悪くないわ」

「またそう言うのかい？ 何度も言っているだろう、他者を傷つけては駄目なんだ。もっと別の……」

「早く行って、ここに居ても多分つまらないし、聞かれたくないことだってあるから」

「あ、はい……」

　食堂を出る。二人の言い合いが微かに廊下に漏れていた。

　とりあえず、下手に院内を歩き回って、なにか危険なことに巻き込まれるのも嫌なので、アリスさんが言った通り自分の病室に戻ることにしよう。

　幸い、誰とも会うことなく病室まで戻ってくることができ、ほっと一息をついて病室に入ると、私のベッドを指をくわえて見ている青年がいた。

「あ」

　思わず声が漏れる。

　その声に驚いたのか、青年はびくりと体を震わせ飛び上がった。まるで漫画のような反応にこちらも少し驚いてしまった。

　青年がこちらを見る。そして少しの間。

「あー、キミ」

「……な、何？」

　ぐいと息がかかるほどの距離まで青年が近づく。そして大きく二回ほど息を吸うと、青年は私をしっかりと抱き締めた。

　

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