[SLAM DUNK]短編小説 (ページ2)

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まだ消えない、消せない[薄っすら鉄+三の洋+三] ページ2

襲撃事件の日、洋平や徳男は自ら罪を被って三井を庇いその後三井は無事バスケ部に復帰した。二年ものブランクがあり、体力面や疲労状態での3pのフォームにバラつきがあり頼りないところはあるがプレーのテクニックは部員達にとってとても頼れるものだ。後輩達とも短期間で打ち解け、先輩らしい姿を見せていた。

しかしその裏側で、未だ三井を悩ませるものがあった。

―…鉄男。
ついこの前までは、学校サボって…そんで隣には鉄男がいた。
あれから竜の姿も見ていない。俺は襲撃事件の後、バスケ部に復帰した。
それと同時に竜からの反感も買ったであろうと思った。
鉄男は…どう思ったんだ。あの時。
今、会ったら鉄男は俺に「頑張れよ」なんて言えるだろうか。
裏切られた、なんて思っていないだろうか。

いつもだ。

屋上に来て寝転がっては同じ事をぐるぐるぐるぐる…、考えている。
あれからずっと、この事で思考が支配されているようだ。

ふと、目を閉じた、すると頭上から聞き慣れた声が降ってくる。

「…お、ミッチーじゃん。受験生なのにこんなとこでサボッて、大丈夫なわけ?」
「!!」

その声に無意識にビクリと体が震え反射的に起き上がり、フェンスに背を付けた。
水戸洋平だ。

「ちょっと、そんなに吃驚しないでよ」
「…お、おぅ…わりぃ」

こいつは真っ先に俺を庇った張本人だ。俺をバスケ部に復帰させてくれた。けれどこの愛想の良い笑みでさえ、俺のなにかが恐怖する。まさかこんな所で会ってしまうとは…。

「…なあ、ミッチー」
「なんだよ…」
「ミッチーさ、まだ俺の事怖かったりする?」

水戸の唐突な言葉によって目を直視出来なくなった。態度にはあまり出さない様に気を付けてはいたが、やはり三井の無意識の反応が露骨過ぎたようで、水戸は目尻を下げて笑っていた。

「…まあ、あの時は結構ボコっちゃったし…。無理して振舞う必要はないけどさ、皆心配してるよ?」
「…」

「…気にしてんの?鉄男の事とか」
「…え」

見透かす様な目だった。肯定も否定も出来ない。
沈黙の後水戸はまた笑った。

「まあ、何か困った事があったら俺とか、それが嫌だったら花道にでも良いなよ。アイツ、案外そういうのは自分の事みたいに真剣になって聞いてくれるし」

フェンスに背を預け煙草を銜える水戸。あの頃とは違う優しい笑みだ。
けれどその笑みからはあの襲撃事件の出来事が、あの痛みが何度でも蘇る。