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「海人一、DVD観にくる？」
「え？」
「なんかさー、ママに海人の写真見せたら会いたがっててさ笑」
「え、まじ？そうなの？」
「うん、きっと喜ぶ笑」
ママに気に入られるなんて最高でしかないじゃん。でも、Aは？俺のことなんて興味もないでしょ。うん、分かってんだ。友達以上、恋人未満ってほんとにあるんだよ。女の子の家に普通に上がれるのは俺が友達だから。海外の映画をオススメしたら「１人で観てもつまんない」って言うからいつか一緒に観ようね、なんて笑ってたのが昨日のようだ。そもそもなんでママに俺の写真なんか見せてんだよ。
「めっちゃいい映画だった〜」
「でしょ？」
「あ、ねえ良かったらご飯食べてって」
「え、いいの？」
「うん！もうすっかりお気に入りだよ海人のこと」
「ヘヘへ。嬉しい」
Aのママ、めっちゃ良い人。Aって感じ。
「将来お嫁さんにもらってくれない？」なんて冗談交じりの会話も、はははって流したけど、俺じゃ無理なんですよ。うん。ね。
そして高３。
２度あることは３度ある。なくて良かったのに。こうも俺を苦しめるAの存在が日に日に大きくなっていく。そして、新任でやって来た平野紫耀によって全てを奪われた。
見ればすぐ分かる〈 恋煩い 〉、俺が一番分かってる。重ならない想いが宙に舞って、決して俺に向けられないその視線がいつだって羨ましかった。
〈 ……どうしよ、海人 〉
着信音が鳴った時点で薄々気付いてた。この電話に出たら、Aはきっと泣いてる、と。案の定、声を震わせて俺の名前を呼ぶAに冷静に投げかける。
〈 ……私も海人のことならなんでも分かるよ 〉
分かってたら俺たち、もうこうはしていられないよ。俺が毎日どんな気持ちで過ごしてるか分かってたらAは絶対俺を避けるでしょ。
どうにもならないんだ、恋愛なんて。
歯止めを掛けたって、やめようと思ったって、
それができないのが恋だよ。
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作者名：詠夢
| 作成日時：2021年8月10日 17時
