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「じゃ明日もよろしくお願いしまーす。」
仕事が終わり、マンションの前で
二宮さんへ一礼して見送り車に戻る。窓の外を見ていた。
「………。」
「………。」
もう見慣れてきたタワーマンションの間を
流石に慣れた沈黙の中縫うようにすすむ。
一台の対向車が鋭く光で車内を照らす。
淡く浮かび上がった櫻井さんの顔が鏡越しに見えた。
その横顔はどこか儚げで。でも、なぜか妖艶で。
街灯の白い光が滑るように唇をなでた。
「ねぇ。椎名さん。」
いつもの調子で、いつものトーンで。
「はい。」
口以外を闇でかくして瞳が街の光を映して唇だけが私に問う。
「ニノのこと、好き？」
「え、ぇ？素晴らしい方だと思いますが。」
唇が形を変えた。
天使が悪魔になる様に。
黒く闇が唇を侵食する。
「あなた、さ。やっぱり人のことを探る以前に自分のことを知らないね。」
何を言っているのだろう。
櫻井さんの言わんとすることは分かった。
だが、それは大きな見当違いだ。そんなことを一度も思ったことはないし今後そう思うこともないだろう。仕事なわけだし……。
「確かに素敵な方です。どんな人でも、二宮さんの心遣いや温かい血の通った心を感じれば惹かれていくのだろうなと思います。でもそれだけです。それ以上でもそれ以下でもありません。」
再び沈黙が車を覆った。
すれ違う対向車が徐々に少なくなっていく。
スルスルと闇を切って走る。
その先、一瞬。
何もかもすべてが止まったような、真っ暗な闇が広がった。
ここの数百メートルは何もない。
建物も、街灯も、車も。漆黒が深まっていく。現世が遠のくような
そんな世界で。
「……ならさ。なんで長岡に『調査終了』って言わないの。」
すべて知っているような冷たさを私へ刺した。
「え？」
未だに調査が終わっていないからに決まっている。
そういい返そうとしたとき。
息を吸い込んだ刹那。
「あ…………。」
脳裏をよぎる、【もう心に決めた方。もう、手遅れだ。なんて言ったら――――。】
あぁ。
「貴方は気が付いてる。」
彼にとってその相手の方がどんなに大切か。
【守りたい。それだけです。】
もう、どんなに他人が足掻こうが引き離すことが出来ないか。
【もう、何もいらないから。お願い、椎名さん。】
彼らが育てきった幸せがどれだけの大きさか。
【もう、嫌なんだよ。】
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作者名：DJ×MJスタッフ一同
x他1人 | 作者ホームページ：.
作成日時：2014年8月30日 0時
