MJ～remix～part 2【潤くんハピバ短編集】 (ページ19)

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「あ、椎名さん。」

「お待たせしてしまい申し訳ございません。」

待ってないよ。

彼は、松本さんは、
慣れた様子でするすると中へ続く通路を歩く。
外から見えないように上手く同化されたその場所には、彼らが一目を気にせずに行ける場所なのだろう。
入り口に相反して、店内は程よくざわついていた。

「もう頼んじゃったけどよかった？」
「えぇ、構いません。」

仕事場とは違った柔らかい物腰。
普段の彼らはみんなこんな感じなのだろうか。

「……でさ。切り込んでいい？」

ドクンと一瞬目の前が暗くなった。

「どうぞ？」

気取られないように笑顔を絶やさない。
相手のペースを掴んで……。

「やっぱりやめたー。」
「え？」
食べよーはい。

個室の入り口には、料理を持った方がいて

「うまいよ、ここの料理。」
慣れた手つきで取り皿へ料理を入れていく。
ぽかんとしている私を置いて、一人食べ始めた。
目の前に置かれた皿から白い湯気をあげ、温かい汁が揺れた。

――――――――食べるか……。

仕方がない。と思いつつ、口に料理を運ぶと本当に美味しい。
柔らかいお肉がころりと口の中で転がって形が崩れていく。

普段あまり、そういったことに興味がわかないから余計美味しく感じるのかもしれないけれど。

「美味しい……。」
「でしょ？翔さんが教えてくれたんだよね。」

あ～結局そのまま来ちゃったと、確かに少々派手な服を着ていて

「汁飛んだら大変ですね。」「それ翔さんからもよく言われるんだよね。もういい歳したおっさんなんだけどなんだか心配されちゃってねぇ。」

あったかい料理で少しずつ幸せな気分になって
構えていた心がどこか温かくなってきた。
それに加えて、よく喋るから
なんでここに来たかなんて忘れてしまいそうになる。

「年下には見えないね。なんか、雰囲気大人だわ。」

「それ、褒めてるんですよね？老けて見えるとかそんなことじゃないですよね。」

「いいでしょ、どっちでもさ～。」

「よくないです。」

「そこらへん、女の人こだわるよね～。俺らその年の頃むしろそう言われたら喜んでたけどなぁ。」

一応褒めようとしてくれたらしい。
「女の人は面倒ですよ？」
そうだね～、面倒。

ゆらりと、瞳が揺れた気がした。