番外篇1 ページ38
.
『よォ』
待ち合わせの店に入れば、もうあの人は既に座っていた。
適当に酒を頼み、取り敢えず乾杯と称してグラスを合わせ、ほぼ同時に口元へ持っていく。冷たい感覚が喉を潤す感じがたまらない。
彼女に健康に悪いと言われていても、この快感があるから酒は止められないのだ。
『何か変な感じですね。妹の旦那と飲むなんて』
『確かにな。嫁の兄貴と飲むなんて』
くく、っと喉奥で押し殺したような笑いをお互い漏らし、空になったグラスに新たに酒を注ぐ。
俺と一緒に酒を酌み交わしているのは、来週式をあげAの夫となる男だ。
『Aのこと、頼みます』
『……お前ら、そっくりだな』
俺が柄にも無く真剣な面持ちで頼んだのにも拘らず、先ほどよりも意地が悪そうに笑われる。俺の口元がきゅっと結ばれたのを一瞥したこの人は、バカにしてないと言いたげに手をひらりと振った。
『Aも同じこと言ってたよ。お前のことをよろしく、ってな』
愛おしいものを思い浮かべているのか、惚気けた顔でグラスに口をつける。その横顔にこれ以上怒れるわけもなく、代わりに少し寂寥じみた喪失を感じた。
『……アンタのことだ。アイツを泣かせることがあるでしょう』
『ひでーな』
『でも、その分……いや、その倍は笑わせてやってくだせェ』
俺の言葉に旦那はおう、と頷く。ぐいっと勢いよくグラスを傾け、入っていた酒を飲み干した。「いい飲みっぷりだねェ」と笑う旦那は俺のグラスに麦酒を継ぎ足す。
『……アンタがちゃらんぽらん過ぎてアイツが怒ることもあるでしょう』
『うるせーよ』
『…でも、絶対に最後は仲直りしてアイツを幸せにしてやってくだせェ』
これはアンタにしか頼めない。護ってくれ、俺の大切な妹を。アンタなら信用できる。
本当は自分がそうしてやりたいのに、血の繋がりとは結構厄介なもので、兄という立場にも限度があるのだ。
『ったりめーよ。アイツ一人幸せにできねェで何が夫だよ。全部護るさ、アイツが大切に思うものもアイツ自身も』
あァ、俺の妹は人を見る目がある。
続く (更新停止中) お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←作者から
480人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
白桜姫 - 続き見たい(´;ω;`) (2018年10月21日 3時) (レス) id: 6519ad1531 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ひなさん» 引退ではなくお引越しにしました笑 あんまり意味は変わらないのですが、お引越しとした方がまたひなさんに会える気がするので! いつも本当にコメントありがとうございます。 これからもよろしくお願いします( ´ ∀`) (2017年12月25日 12時) (レス) id: 645308de9c (このIDを非表示/違反報告)
ひな(プロフ) - ハルさんが引退するとの事なのでハルさんの作品を全て読もうと。感動しました…泣きましたね…泣きながら読んでました(T-T)番外篇も、楽しみに待っています。 (2017年11月11日 13時) (レス) id: 843e6f4730 (このIDを非表示/違反報告)
ハル(プロフ) - ドS娘さん» 前作でもコメントありがとうございます。 映画化ですか、これが……。いいですね、そんな妄想をしながら今夜は寝ようと思います。 読んでくださりありがとうございました。おやすみなさい (2017年7月5日 23時) (レス) id: 11a385a726 (このIDを非表示/違反報告)
ドS娘 - 感動してガチで泣きましたもう映画化して欲しいです! (2017年7月2日 10時) (レス) id: 8d85534e35 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ハル | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/harumemory
作成日時:2015年12月10日 17時