拝啓××様 4【銀魂】

大切な人の成長 ページ8

「…です」
「え？」


新八くんが顔を上げる。飛び散った涙が太陽の光を反射してキラキラと輝く、ボロボロと頬を伝う雫が地面にこぼれ落ちてゆく。


「銀さんはもう…帰って来ないです」
「…新八くん」


この2年間、銀さんの帰りを待っていたのは新八くんだって同じ。万事屋として、新八くんと神楽ちゃんは銀さんの帰りを信じて待っていたはずだ、その気持ちはきっと誰よりも強い。

それなのに何故こんなにも急にこんな事を彼は言い出したのだろうか。新八くんは着物の袖で顔を拭って私の疑問に答えるかの様に口を開いた。


「僕と銀さんの出会い、結構突然だったんですよ。神楽ちゃんも…偶然的に出会った感じです」


偶然に出会って、ここまで銀さんを信じて何となくダラダラやっていた。それが万事屋なんです。新八くんは如何にもそれらしいでしょう、と苦笑する。


「フラフラした人なんです、掴み所が無くて。そのくせあっという間に皆の心を掴んで搔っ攫っちゃう、狡い人ですよね」
「…。」


それは、私にも覚えがあった。
前に神楽ちゃんと話した、銀さんは流れる雲の様に掴み所がない。私と同じ事を思っていたのか。


「だから、別れもこんな風に突然なのかなって。フラフラ〜っていつもみたいに何処かへ行ったと思ったら、もう帰って来ない…、本当に狡い人です」
「でも、何でお墓なんて…」


例えもう帰って来ないとしても銀さんが死んだなんて事実は何処にも無い。まだ生きている可能性だって十分にある、私はその可能性を信じている。

新八くんは今一度お墓の方へ目を向けると「ここには銀さんの魂が眠っているんです」と小さく笑う。


「何処で何してるのか分からないけど…ここに銀さんの魂は在るんです。銀さんが置いていってくれた万事屋を、銀さんの魂を…僕は継ぎたいんです」


そう語る横顔は既に私の知る新八くんでは無かった。あの銀さんの背中を追いかけていた少年が、こんなにも頼もしい表情をする様になるなんて。


(銀さん勿体無いなぁ)


こんな新八くんを一番見たかったのは銀さんだろうに。「なに一人でデッカくなったみたいな顔してんのォ！？」とか言いながらきっと嬉しそうな顔をするだろう。

新八くんは私に軽く頭を下げると帰路へ向かって歩いて行った。私はその背中を見送る。どこか銀さんの背中を思い出させる様であった。


(どこに居るんですか？)


貴方の大切な人はこんなに成長したんですよ、お墓を見つめて私は目を伏せるのだった。

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