願掛け ページ9
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「それでも待ったんだろィ、この5年間」
再び座敷の外で隊長が呟く。隊長は片手でお酒の入ったグラスをカラカラと鳴らして、それをグイッと仰ぐ。私は「気付いたら5年経ってました」と苦笑した。
「ホント、変わっちまったなァ…町も、お前も」
横目で隊長が私を捕らえる。私は曖昧に笑ってみせる、自分でもそう思っていたから。すると座敷の奥から酔っ払った局長が私達の元へとやって来た。
「本当によォ〜〜Aちゃんも大人っぽくなっちまてェ〜〜…オジさん寂しいよォ〜」
「局長…大分酔ってますね」
私は山崎さんに「お水持って来てくれませんか」とお願いし、千鳥足の局長を安全な場所へと座らせた。局長は私の腕を掴みながら「アレだよ、一瞬分からなかったから」と笑う。
「奪還作戦の時ですか?」
「そうそう、この別嬪さんは誰だ〜って」
あと髪も伸びてたし、と付け足す。私は腰まで伸びた自分の髪を手に「そうですね」と。
「これは…願掛けみたいな物なんです」
「願掛け?」
「願い事が叶ったら切ろうかなって」
へェ〜と局長は楽しそうに笑った。「良いな、そういうの」と局長は座敷の喧騒へと目を向ける。
願い事は5年前から変わらない。
ただ、銀さんに会いたい。それだけだ。
「総悟も…デカくなったなァ」
「もう成人しやしたよ」
「その成長をずっと見届けてやれなくて悪かったな…」
局長は隊長の頭をガッと掴んでわしわしと無造作に撫で回した。隊長は一瞬だけ目を見開くと「もう…何処にも行かねーで下せェ」と小さな声で言った。その目は僅かに潤んでいる。
「もう何処にも行かねーさ、てめェらが行かせちゃくんねェだろ?」
「当たり前でさァ」
ぐすっと隊長は鼻を啜って、局長の顔をあどけない笑顔で見つめた。久し振りに見た隊長の笑顔、私も何だか泣きたくなった。
***
カン、カン、カン。
金属製の階段を登る音は昔から変わらない。もう深夜帯だから下のお登勢さんのお店に響かないか少し心配だった。
宴会の後、私は万事屋へと足を運んでいた。ここにはまだ神楽ちゃんが住んでいる。まだ未成年の彼女の様子を週に一度、私は見に行く事にしていた。この時間にまだ起きているかは分からないが。
「今晩は」
カラッと玄関の引き戸を開ける、あれだけ注意をしているのに相変わらず鍵が掛かっていない。玄関にはブーツが脱ぎ捨ててあった。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 総悟13さん» 毎度ありがとうございます!涙…と、取り敢えずハンカチをどうぞ!!助けたいのは山々だったのですが今回はここから大きく動くので…どうなるかドキドキして頂ければ嬉しいです( ´ ▽ ` ) (2017年3月4日 21時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
総悟13(プロフ) - 衝撃のラストに涙してしまいました......。こういう死の縁に立った主人公、ヒロインは助かるのが定番ですが助からないとは......本当に衝撃です。次も楽しみにしています!! (2017年3月4日 12時) (レス) id: 467c9905a7 (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 桃乃さん» そうなのですか…!励ましのお言葉、本当に嬉しいです。私も頑張ってこの子を皆さんに愛される子にしたいです、頑張りたいです。応援、本当にありがとうございます。最大の励みになりました!! (2017年2月22日 20時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
桃乃(プロフ) - お返事ありがとうございます。私も以前、活動させて戴いてたときにスランプになりましたよー!でも、お腹を痛めて生んだ子(作品)は自分が思っているよりも凄く良い出来になってる筈なので自信を持ってくださいねー!応援してますっ! (2017年2月22日 18時) (レス) id: 3b34613ca3 (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 桃乃さん» コメントありがとうございます!最近少しスランプ気味で思う様に書けていなかったのでそう言って頂けて本当に嬉しいです。これからも桃乃さんに楽しんで頂ける様に頑張ります。 (2017年2月22日 11時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作者ホームページ:http://twitter.com/hearty__smile
作成日時:2017年2月19日 18時