拝啓××様 4【銀魂】

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何も、聞こえない。
何も、見えない。

ただただ辺りを包み込む静寂と真っ白な景色。霞む意識と世界が遮断されつつあるような感覚。


(ここは…何処？)


何も、感じない。
ただ、そこに在るという感覚は私に違和感を覚えさせる事よりも温かな何かに包まれているような安心感を与える。


(誰…？)


不意に、ぼんやりと目の前に何かが浮かび上がった。それは人の形をしていて私を腕の中に抱いて顔を覗き込むのだ。

誰だかも取れぬその人はポロポロと涙を流しており、私の頬は涙で濡れてゆく。


(どうして貴方が泣くんですか？)


彼は答えない。何故だか私はその人は男性だと思うのだ。哀しそうな顔をして涙を流す彼。何も答えてはくれない。


(何も哀しい事なんてないのに)


だって私はやっと待つ事を終われる。ずっと待ち続けて、ついぞ会う事の叶わなかったあの人。本当に、全く。何処で何をしているのか。


(私、好きな人がいたんです)


彼に言っても仕方ないのに私は微笑しつつ言っていた。


(すごく、すごく大好きな人で。だけど…もう会えない人で)


一体何処にいるのだろう。私はずっと生きていると信じてたのに、信じたいのに。それなのに今は彼がこれから私の逝く場所に居たら良いのにとさえ思う。


(やっと…会えますかね。あの人、お人好しで事件に巻き込まれ易いから…)


今度もまたいつもみたいにギリギリを渡り歩いているのか、落っこちてしまったか。


(…わ、たし……)


もう、意識なんて殆どない。
声も、出ていない。

掠れた息だけが吐き出される。


(さ、いご…らい………あい、た…かっ……た)


私がそう言った所で、ようやく彼は口を開いた。だけど、私はもう彼の言葉は聞こえなくて。






沈みゆく意識。
彼の哀しそうな顔だけが顔に巻かれた包帯の隙間から見え隠れしていた。

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