再演 ページ42
高杉さんが息を呑むのが分かった。流石に驚いたのだろう、私は続けてこう言う。
「自分の体の事は自分が一番分かっています。私はきっと…今日が最期になります」
これは、嘘。
よく映画なんかでヒロインがこういう事を言うから私も言ってみたかったのだ。本当は今日、廊下で隊士が話しているのを聞いただけ。未だに死ぬなんて実感は無い。
でも、本能的な部分なのだろうか。刻一刻とその時は迫っているみたいで、長くても一週間が限度だと思う。それなら今夜がチャンスだ、やっと連れ出してくれそうな人が現れた。
「真選組の皆は優しいから、だから私が少しでも長く生きて欲しいと思っています。この状態で外に出るなんて死に行くのと同じですから」
「だから反対される、と」
「そうです」
強かな女だ、高杉さんは鼻で笑う。でも彼以外に頼める人は居ないのだ。
「だって…貴方は私が死んでも悲しくは無いと思うから。私の願いを聞く義理は無いけれど、生き長らえさせる理由も無いでしょう?」
「…。」
「どうしても、どうしても…ここで死にたいと思う場所が在るんです」
最後まで諦めない、そう誓ったから。だから"あの場所"に行きたい。あそこなら、もしかしたら会えるかも知れない。本当に私が死ぬ直前でないとダメだと思うから。きっと、それが最後のチャンスだ。
私の懇願を高杉さんはどう受け取ったか。長い溜息の後、無言で彼は私を抱き上げた。「しっかり掴まってろ」と言って窓の外へと降りる。
「ありがとう、ございます…!」
力の入らない腕で首に抱き付けば、私が落ちないように高杉さんは腕に力を込める。「勘違いするな」と耳元で聞こえた。
「俺ァてめェの為にやってる訳じゃねェ。これは、あの時斬り損ねたからな。大事な大事なお姫サマを奪われて、アイツはどんな顔するだろうなァ」
ククッ、と喉で嗤う。そうだ、あの時も助けに来てくれたのは銀さんだった。多分、この人はあの日を再現しようとしているのだ。そうして銀さんを待っているのだ。
「高杉さんも…銀さんの事、好きですもんね」
「馬鹿言うなぶっ殺すぞ」
「ふふ…良いですよ、どうせ長くは無いんですから。でも、どうせなら二人で銀さんを迎えましょうよ」
その方がきっと喜びます、少しずつ霞む目をこすりながら言えば「着くまで寝てろ」と声が降ってきた。この人は怖いのか、優しいのか。
もっと別の出会い方だったら違う関係もあったのだろうか、霞む意識の淵で私はそう思った。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 総悟13さん» 毎度ありがとうございます!涙…と、取り敢えずハンカチをどうぞ!!助けたいのは山々だったのですが今回はここから大きく動くので…どうなるかドキドキして頂ければ嬉しいです( ´ ▽ ` ) (2017年3月4日 21時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
総悟13(プロフ) - 衝撃のラストに涙してしまいました......。こういう死の縁に立った主人公、ヒロインは助かるのが定番ですが助からないとは......本当に衝撃です。次も楽しみにしています!! (2017年3月4日 12時) (レス) id: 467c9905a7 (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 桃乃さん» そうなのですか…!励ましのお言葉、本当に嬉しいです。私も頑張ってこの子を皆さんに愛される子にしたいです、頑張りたいです。応援、本当にありがとうございます。最大の励みになりました!! (2017年2月22日 20時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
桃乃(プロフ) - お返事ありがとうございます。私も以前、活動させて戴いてたときにスランプになりましたよー!でも、お腹を痛めて生んだ子(作品)は自分が思っているよりも凄く良い出来になってる筈なので自信を持ってくださいねー!応援してますっ! (2017年2月22日 18時) (レス) id: 3b34613ca3 (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 桃乃さん» コメントありがとうございます!最近少しスランプ気味で思う様に書けていなかったのでそう言って頂けて本当に嬉しいです。これからも桃乃さんに楽しんで頂ける様に頑張ります。 (2017年2月22日 11時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作者ホームページ:http://twitter.com/hearty__smile
作成日時:2017年2月19日 18時