拝啓××様 4【銀魂】

希望と絶望 ページ37

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希望の裏側に絶望は存在する。
背中合わせに生きる二つの言葉が誰かを救うのなら、その片方では誰かを突き落とす。

世界は綺麗に廻るのだ。
秩序を保つべく幸福と不幸が均等にもたらされる様になっているのだ。結局は誰もが平等に幸せになり、その分苦しい事も与えられる。

あの日々が幸せ過ぎて、私は人生の幸福分を全て使い切ってしまったのだろうか。


(白、…真っ白です)


見上げる真っ白に2ヶ月経っても慣れる事はない。ただ、ぼんやりと見上げる病室の無機質な空間には何も無い。希望は勿論、絶望さえも。

人は不幸であるよりも何も無い状態の方が苦しいと私は初めて知った。やる事もなく見上げ続ける生活に私は何を思ったら良いのか分からなくなっていた。

けれど、心の中に希望は在った。
あの時、隊長と約束したから。誓ったから。銀さんを何があっても待つと心に決めたから。

だから私が白詛に感染した今でも私は毎日手紙を書き続けた。書けた手紙を届ける術は無いから、それは隊長に預けて墓場まで届けて貰った。今はこれしか出来ないから。


「A」
「あ…！隊長！」


夕刻、いつもこの時間に隊長は来てくれる。怠さの絶えない体に鞭を打ち、隊長の支えを借りながらも体を起こせば真っ白な髪が肩から滑り落ちる。こうなるまではあっという間であった。


「調子はどうでィ」
「だいぶ良いです、今日はご飯も食べられましたし」
「そうかィ、そりゃ良かった」


最近はご飯を食べるのも辛くなっていた。1日に一食出来れば上等、食べたくても喉を通らず一口も食べない事もしばしばあった。隊長はパイプ椅子に腰をかけて、やるせないと言わんばかりの笑みを浮かべる。


「どうして…お前ェばっかこうなるんだろうねィ」


隊長は弱々しく笑う。私ばかり…そうでは無い。別に私ばかりが不幸な訳では無くて、同じ様に苦しんでいる人なんて沢山居て、寧ろ私なんかは軽い方で。だけど折角気を遣ってくれている隊長にはそんな事が言えなくて私は曖昧に笑う事で誤魔化した。

この頃には病院内で新八くんを見かける事も無くなっていた。二つ隣の病室の若い女性が一ヶ月ほど前に亡くなったのだと看護師さん達の会話から私は知った。

色々な事が変わってゆく。
まるで、五年前から今までの変化を超える様に目まぐるしく変わる。自由の利かなくなった体にショックを受けるより、銀さんが好きだったこの町が変わってゆく方がずっと辛い。

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