拝啓××様 4【銀魂】

三人と一匹の幸福 ページ25

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病院の中庭に二人で出る。ベンチの横にあった自販機で新八くんは二人分の缶ジュースを買うと片方を私の手に押し付けた。


「あ、ありがとうございます…」
「…。」


何も言わず新八くんはベンチへ腰を下ろす。私もその隣に遠慮がちに腰を下ろした。誘い出したのは自分だったが何と切り出したら良いのか分からず手の中で缶ジュースを転がす。新八くんは仏頂面でジュースを飲んでいた。


(…。)


上手い会話の糸口がどこにも無い、昔は色んな話をしたのに今は第一声で戸惑ってしまう。私も新八くんに倣って取り敢えずは缶ジュースを飲もうかとプルタブに手を掛けた。


「…ん、……あれ？」


カチ、カチ、と爪が中々引っかからない。いつもは簡単に開けられるのだが…今日は緊張でもしているのだろうか、私はジュースの蓋が中々開けられず一人カチカチとやっていた。


「貸せ」
「あ…」


すると、そんな私の不格好な様子を見兼ねたのか新八くんは私の手から缶を奪い取って、カチリとプルタブを簡単に開けた。黙って差し出されたそれに「ありがとうございます」と私はお礼を言いつつ受け取る。


(…甘い)


喉を通る甘い液体、缶にはポップな桃が描かれている。すごく昔に私はこれと同じ物を万事屋で飲んだ気がする、確かこれが一番安くて美味しいと神楽ちゃんが言っていた。新八くんはそれを覚えていたのだろうか。

何故だか…泣きたくなる。
神楽ちゃんと一緒に居ても、新八くんと一緒に居ても、思い出すのは楽しかったあの頃。三人と一匹がいつも仲睦まじく万事屋をやっていた頃だ。





私は…二人の為に何も出来なかった。





「それで、話というのは何だ」


やがて缶の中身も無くなりかけた頃、新八くんがそう口火を切った。私は缶を握る手に力を込めて「すごく…聞き辛い事なんですが、」と前置きをした。もしかしたら彼は怒るかも知れないと思ったから。

だけど、新八くんはきっとどこかで私が何を聞きたいのか予感していたのだろう。顔色一つ変えずに空を見上げて、そこに広がる紫に飲まれたオレンジを見つめて。


「あと、一ヶ月だ」


そう、ぽつりとこぼした。

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