見えない壁 ページ24
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…。
「じゃあ、私はそろそろ帰ります」
「そう?気を付けて帰ってね」
「はい」
小一時間程お妙さんとお話をして、私は彼女の病室を後にした。病室の引き戸を閉める間際、私に手を振るお妙さんが再び窓の外へと目を向けるのが分かった。ここから見える夕焼けが好きなんだ、とお妙さんは以前言っていた。
(お妙さん…)
彼女との会話から一瞬のやるせなさを感じて、引き戸の前で私はぼんやりと突っ立っていた。この病院も人が少なくなった、誰一人として廊下を歩く者は居ない。いつか、ここも廃れていくのだろうか。
「…また、来たのか」
「あ…、今日は」
不意に掛けられた声に振り返れば、そこには新八くんが居た。彼は手に花束を抱え、何とも言えない顔で「見舞いか」と病室に目を向けて呟く。
「もう帰るところなんですが…」
「そうか」
私の返事を聞いて新八くんは病室の引き戸に手を掛けた。もう、話す事は無いという意思表示。私は「あ、あの…!」と彼が引き戸を開ける前に勇気を出して声を出す。
「何だ」
「少し…二人でお話出来ませんか?」
私の言葉に新八くんは暫し目を瞬かせ「…話す事は無い」と目を逸らす。私は食い下がり「お時間は取らせません…少しで、良いんです」と懇願する。新八くんは何も言わなかった。
「大切な…お話です。どうしても新八くんと話さなければいけない事なんです…!」
「…。」
「新八くん…!」
お願いします、と私は頭を下げる。どうしても新八くんとちゃんと話がしたかった。もう、2年近く新八くんとは話が出来ていない、今がチャンスだと思った。
暫くして頭を下げ続ける私の頭に重い溜息が降った。
(ダメ…でしたか)
その反応に悔しさと悲観の混ざった思いで拳を握り締めれば「…少しだけだ」と諦めたような呟き。顔をあげれば、此方を見る事なく目を逸らして「少しだけなら」と再び口にする新八くん。
「ありがとうございます…!!」
良かった、と思って今一度頭を下げれば「早くしろ」と新八くんは先にさっさと歩き出す。私は置いていかれない様に慌ててその背中を追いかけた。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 総悟13さん» 毎度ありがとうございます!涙…と、取り敢えずハンカチをどうぞ!!助けたいのは山々だったのですが今回はここから大きく動くので…どうなるかドキドキして頂ければ嬉しいです( ´ ▽ ` ) (2017年3月4日 21時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
総悟13(プロフ) - 衝撃のラストに涙してしまいました......。こういう死の縁に立った主人公、ヒロインは助かるのが定番ですが助からないとは......本当に衝撃です。次も楽しみにしています!! (2017年3月4日 12時) (レス) id: 467c9905a7 (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 桃乃さん» そうなのですか…!励ましのお言葉、本当に嬉しいです。私も頑張ってこの子を皆さんに愛される子にしたいです、頑張りたいです。応援、本当にありがとうございます。最大の励みになりました!! (2017年2月22日 20時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
桃乃(プロフ) - お返事ありがとうございます。私も以前、活動させて戴いてたときにスランプになりましたよー!でも、お腹を痛めて生んだ子(作品)は自分が思っているよりも凄く良い出来になってる筈なので自信を持ってくださいねー!応援してますっ! (2017年2月22日 18時) (レス) id: 3b34613ca3 (このIDを非表示/違反報告)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - 桃乃さん» コメントありがとうございます!最近少しスランプ気味で思う様に書けていなかったのでそう言って頂けて本当に嬉しいです。これからも桃乃さんに楽しんで頂ける様に頑張ります。 (2017年2月22日 11時) (レス) id: 9b1d9c93d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作者ホームページ:http://twitter.com/hearty__smile
作成日時:2017年2月19日 18時